岡山市大原・牟佐・馬屋地域の植生
この地域は狭い地域に異なる地質の地域があり、地質による植生の違いが明瞭です。
1975年頃より昔は全域がアカマツ林であったが、マツ枯れ病により甚大な被害を受け、アベマキやコナラなどの夏緑広葉樹林に変遷した。 アカマツの群落が再生している場所は、尾根型地形に発達してはいるのだが、横に広がっている。この地域は急傾斜地であり、地質構造的に異なった性質の層が存在するものと思われる。地質図でも、同じ中・古生層ではあるが、この部位で性質の異なったものとして図示されている。 このアカマツの再生地では、傾斜が急峻であり、岩盤上に土壌が薄く堆積している痩悪な林地である。このような場所にもアベマキは生育しているが、アカマツに比べて生長が不良であり、アカマツが優勢な状況になっている。 岡山県の沿岸域では、10年に一度程度の間隔で夏期に降水量が極端に少ない異常気象が発生する。このような年には夏にも関わらず山に生育している樹木の多くが落葉する。このような厳しい気象条件によって、広葉樹の生育が制約されているものと思われる。 なお、このような異常気象によって落葉した樹木の内、夏緑樹は秋雨の頃に葉を再生するが、アラカシなどの常緑広葉樹のダメージは大きく、その年は葉を再生しないことが多い。このような観点からは、岡山の沿岸域には、雨期に葉を展開する「雨緑林」が存在すると言えよう。 |
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上の写真につながる山塊であり、山頂から斜面下部にいたる一連の斜面として、美しい植生配分となっている。山頂部分から南西に伸びる尾根斜面はアカマツ林であり、マツ枯れ病の激しかった年代に若齢林であったこともあり、よく残存している。 斜面の中部から下部に掛けてはアベマキの優占する夏緑広葉樹林となっており、耕作地との境界部分には竹林が見られる(橙黄色の部分)。 右:左上の写真の冬季の様子:高木層が展葉している時期にはわかりにくいが、斜面下部のアベマキ林では亜高木層から低木層における常緑広葉樹林化が進行しており、アラカシが優勢になりつつある。写真の部分では民家の裏山であり、側方からの日照により、特にアラカシの生育が良好となっている。このような光環境のギャップ部分を除けば、斜面下部はアラカシが低木層に繁茂している状況である。 |
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上の中古生層地域の東側に連なる山塊であり、地質は流紋岩である。全般的にアカマツが卓越している。 |
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上の写真の道を挟んだ反対斜面である。 非常に長期にわたって持続的なマツ枯れが発生しており、下層の夏緑広葉樹(コナラが主体)が次第に生長しつつある。 現時点においては南斜面に比べてマツ枯れが顕著であるかの印象があるが、実際にはマツ枯れは遅れている。北斜面であるためにマツ枯れが発生しにくく、25年前の初回のマツ枯れ病流行時では被害が少なく、現在のアカマツ高木は当時からの残存木である。 マツ枯れの多発は乾燥も1つの要因であり、北斜面で発生頻度が少なく、その結果長期にわたってマツ枯れが継続することになり、一斉枯死→アカマツの再生という経過をたどらなかった。25年にわたる持続的なマツ枯れによって、下層の樹木が次第に生長し、現時点における散発的なマツ枯損がアカマツの再生を阻止したと言えよう。 |
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この地域は、尾根を横切った形で中古生層と花崗岩の地質的境界線がある。写真で、は左側(西側)の緑の部分が中古生層の地域でありアベマキやコナラの生育する夏緑広葉樹林となっている。尾根の三角形の茶褐色の地域は花崗岩が母岩であり、最近になって枯損が目立ちはじめたアカマツ林である。 本来ならば、尾根にアカマツ林が発達し、斜面下部に広葉樹林が発達している植生配分となって欲しいところであるが、ここでは地質的要因によって植生配分が逆転している。 |
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