植林地の被害状況

 この地域には「広戸風(ひろとかぜ)」と呼ばれる強風が吹くので有名である。那岐山の南側は広い日本原となっており、このような地形が関係するのかもしれない。今回の被害が広戸風によるものであったのかどうかは知らないが、林業に与えた被害は、まことに大きなものである。
 スギ植林地の被害状況

 根返りも見られるが、幹折れが多い。スギの材の柔らかさとの関係であろう。
 同上のスギの断面

 年輪は30以上を数えることができる。成長の状態は中程度。
 ヒノキ林の被害状況

 幹折れもあるが、根返りが多い。材の強度が高いためと土壌が浅いために根返りが多いものと思われる。
 ヒノキの根返りの状況
 針葉樹のほとんどは直根を持たず、横に広く根を発達させる。ヒノキも同様であり、太い横根があるものの、切れてしまっている。
 ヒノキは尾根形地形に植栽されることが多く、土壌が浅い為に根返りしやすかったこともあろう。
 植林地の被害状況

 倒伏の方向は、手前の樹木は北側に、向こうの斜面は西向きに倒れている。
 植林地の被害状況

 太い個体ほど倒れている。
植林地の被害状況

 風倒木の断面を見ると、不規則な破断面が見られたものが多かった。強い風で材が曲げられ、構造が破壊されている。材木としての強度が低下している。
壊滅的な被害
植林地の被害状況
谷部にのみスギが残存
 壊滅的な被害であり、心痛む思いである。しかしながら、自然は再生する。20年もたてば、このような景観に再生するのではないかと思う。
 もしかすると、このような景観は、昔の風による被害の跡地なのかも知れないと思うのであるが、どうであろうか。
 今回の被害は、林業にとっては大変な被害ではあるが、森に棲むツキノワグマなどの動物にとっては、すばらしい贈り物となるはずである。
 2004年の秋には、全国各地でツキノワグマの出没が問題とされた。数年も経てば森の動物たちにとっては良好な生息地へと回復するであろう。
 人間の自然の過剰利用が台風によって諌められたのではないかと考えてはどうであろうか。

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