A2.沿岸低地に分布する種 トベラ・ウバメガシ・ヤマモモ等
本分布型の種は,WI120℃以上の沿岸低地に分布の極大を持っている。年降水量では,ヤマモモを除き,1200o未満の地域で50%以上の高い頻度で出現しており,瀬戸内沿岸の少雨気候に高い適応性を備えていることがうかがえる。
トベラ
海抜100m未満の地域において85%以上の高い頻度で出現しており,主に海岸域に生育している。乾燥に対しても強い適応性を備えている。
ウバメガシ(図7)
主に海岸の急傾斜地に多い。本県沿岸部のような降水量が少ない地域では,急傾斜地は表土に乏しく,非常に乾燥した立地となる。少し内陸の急傾斜地における分布も類似した性格を持つ場所である。本種はトベラに比べてより耐寒性は高いと考えられるが,高木にまで成長しにくいことと,陽樹的性格が強いことから,内陸では他種との競合により,分布が少なくなっているものと考えられる。


図7.ウバメガシ Quercus phillyraeoides
クロガネモチ(図8)
海抜100m未満,及び年降水量1200o未満の地域における出現頻度は,トベラに次いで高いものであるが,WI120℃以上の地域における分布の極大傾向は,他の種ほど顕著ではない。クロガネモチの分布は,沿岸部のみではなく,吉備高原の南縁部,及び県中部の低地等のような,やや内陸であっても,降水量が比較的少ない地域において点々と見られる。


図8.クロガネモチ Ilex rotunda
ヤマモモ
年降水量1200o未満の地域で分布を欠き,海抜に対する出現傾向がやや不明確である。これは,本種は山がちな地形が連なる沿岸部や,海岸線よりも少し陸側を主な分布域としているためと考えられる。また,生育地は谷沿い等の適潤地であることが多く,ウバメガシやトベラに比べ,やや乾燥に弱いと考えられる。
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