タンポポの観察と生態
タンポポは春の人里を彩る典型的な『人里植物』である。このタンポポの世界にも国際交流があり、日本の在来タンポポに加え、ヨーロッパから2種類のタンポポがやってきた。セイヨウタンポポとアカミタンポポである。このような同じ仲間の植物は、よく似た生長・繁殖戦略をとってはいるものの、微妙な違いがあるはずである(違いがなければ、別種として存在できないはずである)。タンポポを観察し、タンポポの種類と生育立地を調査し、生態的特性の違いを明らかにしよう。
1.タンポポの種類
タンポポ属の植物はロゼット葉を持ち、春に花茎を出して花を咲かせるが、花茎には葉がない。秋から春までの期間、地面付近に葉を展開する植物である。分類には様々な意見があり、結構難しい。黄色い花を咲かせる在来種のタンポポはカントウタンポポ・トウカイタンポポ・カンサイタンポポなどに分けられるが、移行的なものもある。帰化タンポポも同様であり、セイヨウタンポポとしてまとめられているものの中には数十(あるいは百以上)の系統があるとされている。そのような分類の困難さがあるものの、岡山市およびその周辺域に分布しているタンポポは次のように分類できる。
【岡山市に見られるタンポポの検索表】
1.黄色い花
a.総苞外片が反り返らない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カンサイタンポポ
b.総苞片が反り返る
@種子の色は灰緑褐色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・セイヨウタンポポ
A種子の色は赤褐色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アカミタンポポ
2.白い花
a.総苞外片がやや反り返る。頭花の中心部は薄く黄色・・・・・・・・・・・・シロバナタンポポ
b.総苞外片はほとんど反り返らない。頭花の中心部は黄色・・・・・・・・キビシロタンポポ
2.調査方法
a.観察と調査項目の検討
調査対象地域を決め、生育しているタンポポの種類を同定しつつ、どのような立地に生育しているのかを観察しよう。生育立地の記載は重要であるが、どのように記載するかを決定するのは難しい。しかし、生育立地を統計的な処理に持ち込むには、いくつかの概念にまとめる必要がある。どのような概念にまとめることが適切か、考えながら調査しよう。
b.タンポポの生育立地調査
- 種の同定:調査するタンポポを決定し、花の色・総苞外片の状況・種子の色などを検討して種の同定を行う。
- 葉の長さと花茎:葉の長さ(ロゼットの半径)と花茎数を計測し、記録する。
- 調査面積(方形区):生育立地を調査するには、調査面積を決めておく必要がある。今回は、調査対象としたタンポポを中心に20cm×20cmの方形枠内を調査することにする。
- 植被率:方形区の中をどの程度植物が覆っているかを調査する。植物に注目すると植物による被覆を過大に評価しやすいので、植物と地面を交互に着目して評価を決める。植被率の評価は、10%刻み程度でよい。
- 植生高:タンポポの競争相手となる植物の高さを計測する。周辺に生育している植物の草丈は、低いものから高いものまで様々であろうが、タンポポを日陰にしている葉の平均的高さを計測することとし、花などの飛び出た部位は計測しない。
- 出現植物の記載:方形区の中に出現する植物の名前とどの程度生育しているかを評価し、記録する。本来ならば、調査区内に出現するすべての種とその被度を求めることが理想であるが、今回は調査区内で最も量的に多い植物を上位から2種記録することとする。
- 生育立地:生育立地を記録する。
3.まとめと考察
−今回のデータでは、カンサイタンポポとアカミタンポポを中心に調査しました−
- 葉の長さと花茎数:「大きな個体ほど多くの花を付ける」→当たり前? 種類によって違いはないか? この調査に関しては、実は調査季節による違いが大きい。今年は調査時期が一週間遅れてしまいましたので、花茎数が少なかったようです。同じ葉の大きさの場合、少ない花茎数のデータよりも最多花茎数のデータを重視して考えてみましょう。
- 植生高、植被率、生育立地に関しては、まとめ方はわかりますね?
- 共存植物に関しては、帰化植物か在来植物かを調べてみるとわかってくることがあります。そのほか、多年草か一年草かなどもおもしろいでしょう。