身近な生物学U 春2学期 | |
2-1.生物の系統と進化
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@変異と突然変異
具体的には、DNAの言語である4つの塩基、ATCGの1つが何らかの原因で変化して別の塩基として機能することになってしまうと、その変化は別のアミノ酸を指定することになり、タンパク質の一次構造が変化し、それはタンパク質の立体構造の変化にまで影響することになる。タンパク質の立体構造は機能と密接に結びついているので、機能に直接関係がある部位での突然変異は、機能に大きな影響を与えることになる。 突然変異の積み重ねが画期的な機能を生むまでになる確率は非常に低いと考えられるが、完成している新たな遺伝子を丸ごと獲得できれば、飛躍的な進化が可能となる。それが有性生殖であるし、異なった生物の合体・共生であり、今流でいえば遺伝子操作ということになる。 一端発生した種内の変異は、有性生殖によって種内に容易に拡散し、新たな遺伝子の組み合わせが発生する。すなわち、遺伝子を交換するという有性生殖が飛躍的に進化の速度を速めているのである。 A多細胞化と分化
「分化」は表皮細胞になったり、筋肉細胞になったりという機能・形態の特殊化することを意味している。例えば、赤血球は酸素を運搬するカプセルとしての機能に特化しており、核も失って細胞分裂することもすでに無い。特殊化することによって高い機能を実現していると言えよう。 卵細胞は、すべての組織に分化することができる全能の細胞であったわけであるが、細胞分裂を重ねて多細胞になる段階で、分化した細胞を生むわけであり、不等分裂という考え方もあった。現在では細胞分裂し、成熟していく過程の中で分化するという考え方となっている。 一端分化した細胞が特殊化ではなく、先祖がえりして一般化することを「脱分化」という。植物では、組織を採取して培養すると、脱分化して多数の個体を多数得ることができることが知られており、農業・園芸などで実用化されて久しい。動物でこのようなことができないか、というのがIPS細胞などの試みである。 ともあれ、多細胞化して機能分化することによって飛躍的に高度な生命体へと進化できてきたのである。 B生態系の進化
有機物がたくさんできると、これをエネルギー源として消費する消費者が誕生できることになり、これが最初の生命体であると考えるのが妥当であろう。この消費者が地球上で繁茂すると、有機物が消費されて枯渇し始め、今度は光エネルギーや化学エネルギーを利用して低分子の物質から高分子の物質を合成する生産者が出現したに違いない。 生産者である緑色植物や消費者である動物も有限な命であるとすれば、遺骸は分解され、有機物を合成するための無機栄養分として生態系に還元される必要がある。この分解者は、最初から存在していたかも知れないが、高度に進化したのは生命の歴史の中で、かなり遅くなってからではないか、と考えられる。 その根拠は、石炭の形成である。単純に考えてみると、石炭は「植物の生長量」>>「植物の分解量」という関係にあるはずであり、生長速度が非常に速かったか、分解速度が遅かったかということになる。生長速度に関しては、当時の大気は現在よりもはるかに高い二酸化炭素濃度であり、生長速度は大変速かったと考えられる。分解者である菌類は、化石などに残りにくいという側面もあるが、現在に比べて不十分な分解能力であったのではないか、と考えられている。 健全な生態系は、生産者と消費者、分解者の存在が調和的であることが必要である。現在の地球環境では、低温であるとか、過湿であるとか、分解しにくい環境条件が無ければ有機物の蓄積は行われない。過去に行われた化石燃料の蓄積は、分解者が進化した現在の生態系では行われることが無い。これが地球温暖化の背景である。
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