身近な生物学U 春2学期
2-2.バイオーム
     気候的特性によって区分された生物群集をバイオーム(生物群系)という。様々なバイオームが形成される環境軸は温度、日照、降水量が主要なものである。温度と降水量は理解しやすいファクターであり、これに加えて季節変動を考慮しなければならない。今回は地球の公転にともなう太陽軌道の周年変化との関係を中心とする。
 15世紀から17世紀にかけて行われたヨーロッパからの世界探検の時期を「大航海時代」という。この時代、自然の様子を相観(見た目)でその特徴を分類し、記録する必要があった。植物の分類が完成していたわけではないので、植生の分類は高木、潅木、草原、砂漠の区別、樹木が生育しておればそれは広葉樹か針葉樹か、常緑か落葉かなどの大まかな区分による分類であった。このような大まかな分類は、当然のことであるが「気候」を反映しており、気候区分と相互に影響を与えつつ、構成されていくこととなった。

気温と降水量
 気温が低いと空気中に含まれる水蒸気量は少なく、気温が高くなるにつれて多量の水蒸気を含むことが可能となる。気温が100℃以上になると水はすべて気体(水蒸気)となってしまう。この事をわれわれの身近な事象に当てはめれば、気温が高くなれば洗濯物はよく乾くし、寒冷な地域ではなかなか乾きにくい。

 空気が上昇(上昇気流)すると気圧が減少して膨張する(断熱膨張)。膨張すると気温が低下する(断熱冷却)。気温が低下すると空気中に存在できる水蒸気の量が低下し、飽和以上になれば微小な水滴ができたり、雨となって地上に降り注ぐことになる。

 気温と降水量には上記のような関係があるので、常に気温と降水量の関係は関連付けて考える必要がある。具体的な事例で考えてみよう。
      地名北緯年平均気温(℃)年間降水量(mm)年平均湿度(%)
      岡山
      34.66
      16.2
      1105.6
      67
      ロンドン
      51
      11
      601.5
      93

 イギリスのロンドンは日本で言えば北海道よりも、カムチャッカよりも北に位置するが、暖流の影響により意外に温暖である。その影響も強いのだが、年間降水量が600mmほどしかないが、ずいぶんと湿っぽい。

季節変動
 地軸は太陽の公転面に対して23.5°の傾きを持っている。この結果、季節によって太陽高度が異なり、日照時間も異なることになる。
 赤道地域:気温に関しては季節変動といえるものは少ないが、モンスーン地帯では雨季と乾季の区別がある地域がある。
 中緯度地域:モンスーンの影響を受ける地帯では、四季の変動がある。
 高緯度地域:夏では太陽がほとんど地平線以下に沈まず(白夜)、冬ではほとんど太陽が地平線上にならない(極夜)。
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