本年度における管理作業範囲は、イトクズモの生育場所となる湛水域と、雑草の侵入箇所となる護岸でした。ここで実施した管理作業のうち、定期観察時の各種計測作業以外で最も作業量の多かったものは、除草作業です。雑草を除去しない場合、これらが繁茂してイトクズモの生育可能な空間が消滅し、本種の生育を維持出来ないことは、当地のイトクズモが水田耕作と密接に関連して生育していることを明らかにした、第1回〜第4回懇談会においても指摘されています。本年度の調査結果からも、最低限4〜8月の5ヶ月間に除草作業を行うことが、長期的に本種の生育を維持する上で重要であることが解りました。
イトクズモの生育に最も大きく影響を及ぼすと考えられる雑草は、ヨシやガマなどの大型の抽水植物であり、これらの侵入箇所は土羽の護岸と渇水期に陸地化した場所を中心としていました。また、護岸部では雑草の侵入する量が多く、手作業による除草を基本とした本年度においては、比較的労力を要する作業でした。しかし、これについては、草刈り機などを使用することで、作業を大幅に効率化できるものと考えます。
一方、水域の除草作業については、護岸に比べ除去する雑草の量は少ないものの、泥沼状の保全池内全域を歩きながらの作業となり、機械の使用も不可能な場所であることから、今後もかなりの作業量が発生すると考えられます。このため、除草作業の実施期間を4〜8月の5ヶ月間に集約したとしても、全保全区域の水域を作業対象範囲とする場合、管理の省力化とコストの軽減は困難と考えます。このため、今後は場所によって管理を放棄するに近い箇所を設定するなどして、管理の省力化とコストの軽減を目指し必要があると考えます。また、管理を放棄する区域に対しては、各保全区域の位置づけと現状を十分考慮した上で、雑草の侵入防止対策(下図)を講じる等の対策が必要です。 |