今年度の7月から9月、岡山市は記録的な少雨に見舞われました。8月の降水量は16mmと平年の1/4以下で、9月でも中旬までほとんど雨の降らない日が続きました。この小雨で、保全区域の水位は計画常時水位(水深10p)より10cm低下し、ほぼ全面で池底が陸地化、一部では乾燥して大きくひび割れている場所も出現しました。7月の定期観察時には、側水路で植被率、開花・結実割合が減少、ひょうたん池、三日月池では生育が確認されず、8月の定期観察時には、側水路でも生育が確認されなくなりました。このため、底泥の乾燥化が進行して底泥中の埋土種子が枯死することを防ぐ目的で、ひょうたん池に隣接する道路側溝の表流水をポンプアップし、ひょうたん池に断続的な給水を行いました。給水作業は8月中旬から降雨により水位が回復した9月中旬まで行いました。下図は渇水期の水位変動の状況です。図中でひょうたん池の水位が急激に上昇している箇所(8/25)は、給水作業の効果です。これによると、ひょうたん池の水位は給水によって一時的に回復するものの、数日間放置すると給水前の水位に戻ってしまうことが解ります。
一方、側水路では、水位の低下が最も顕著であったにも関わらず、9月の降雨により水位が回復すると、本種の発芽が広い範囲で確認されました。その後は全保全区域中で最も良好な生育が観察されています。側水路においては、イトクズモの種子は底泥中で休眠状態となり、渇水による乾燥から逃れ、その後の水位回復が刺激となって覚醒、一斉に発芽したものと考えられます。渇水期の底泥の乾燥化も発芽を促進する刺激になるのかもしれません。
以上から、今年度と同程度の渇水が生じた場合でも、本種はある程度耐性を持っていたと考えられます。しかし、水生植物である本種が極度の乾燥に強い耐性を持つとは考えられません。また、渇水年が連続する、あるいは渇水が今年度以上に長期にわたって続く可能性も否定できません。このため、今後の管理作業の一環として、渇水時の給水が実施出来る管理体制を整備しておくことが必要です。 |