●1999年5月14日の状況    (もどる)  (つぎへ)


 ひょうたん池は、ほぼ全面がイトクズモに覆われています。種子も結実しており、ひょうたん池内だけでも数億粒の種子が実っているでしょう。種子の結実にあわせるように、枯死した部分も目立ってきました。株の外側に円を描くようにまだ若々しい緑色の葉が見えるのですが、株の中央部で枯死した部分が多く、外に向けて株が広がるイトクズモの性質がよく解ります。
 その一方で、ヒシやエビモなどの雑草も芽生え始めました。これらの雑草は、ひょうたん池の基盤整備に用いた、自生地の底泥に含まれた埋土種子が発芽したものと考えられます。生育するヒシやエビモのサイズはまちまちで、これらの水草が、埋土種子集団を形成し、思わぬ渇水などに対処していることが想像できます。ひょうたん池ではこれらの雑草の除去作業を行いましたが、少なくとも盛夏の頃までは雑草抜きを続ける必要があると思われます。

 
左:生え始めたヒシ・エビモ  右:ヒシ・エビモの除去作業


左:種子を実らせ枯死したイトクズモの状況  右:株の外側にはまだ若い葉が生育している


結実した種子

 側水路と三日月池は、基盤整備を行っただけ(自生地の水路の地下3mの泥)で、イトクズモの移植は行っていませんが、生育と種子の結実が確認されました。5月の初旬の段階では、ここのイトクズモは、ひょうたん池に比べ発芽の時期が遅かったためか、株の広がりや種子の結実の時期が遅いように思われました。しかし、気温が上昇し始め、池の水が温かくなるとぐんぐん生長し始め、側水路では底が見えないほど繁茂し、三日月池でも今後の群落の維持に十分なほどの生育を見せています。これらも、ヒシやエビモのように埋土種子からの発芽と考えられます。乾燥冷凍などの人為的な方法では保管が困難なイトクズモですが、埋土種子としての種子寿命はかなり長いのかも知れません。
 植物の保護保全において埋土種子の存在が注目されていますが、実際に体験し、更に「自生地の土」の大切さを認識できました。


左:三日月池にもイトクズモが発生した  右:側水路を埋め尽くすイトクズモ

(1999年6月8日 写真・文:ウエスコ 森定 伸)


  前のページへ/次のページへ
先頭へ   もどる