追跡調査 その4(1999年10月16,19日)



 鯉ヶ窪湿原も急速に秋めき、咲き残っているミコシギクの花も終わりに近くなっており、ヨシはすでに葉の色があせ、冬支度を済ましているように見えた。今回の調査では、昨年の10月20日に実施したベルトトランセクトを再現し、そのデータと比較することが主目的である。データは現在解析中であるので、観察結果を中心に述べてみたい。


 ミゾソバは既に花をほとんど終えており、種子も付いていなかった。種子をすでに散布したのか、付けることができなかったのかは不明であるが、これまでの観察では種子の生産数は極少ない状況であったので、ほとんど種子を付けることができなかった状況であると考えたい。
 しかしながら、充実した状態ではないものの、閉鎖花による種子は多数見られ、来年度の個体維持に必要な種子数は生産されたものと思われる。

 本年の2月に設置した土嚢による堰上げ場所は、開水面にリュウキンカなどが生育し、すでに確認すら困難な状態となっていた。土嚢上も同様であり、設置直後に泥などで被覆した事が大きな効果を上げているものと評価できた。
 掘削した導水路は植生の繁茂によって埋没傾向が高く、本年の冬に再度手をいれる必要があるものと思われた。これらの水路によって全体的には湿潤地域が大きく広がったものの、一部には十分に水が行き渡っていない場所も見られ、この点もこの冬季の作業内容として検討する必要がある。

 導水路によって湿潤化できた場所においては、リュウキンカの繁茂が顕著であり、足の踏み場もない状況であり、導水路の効果が大きく表れていた。特に水路の周辺から水路の中ではリュウキンカの成育が顕著であり、新たな個体の発生も多数にのぼるものと思われる。ベルトトランセクトの調査結果によって、昨年よりも生育範囲、被度の増加などが証明されるものと思われるが、昨年度の調査ではリュウキンカの確認に苦労した状態であったわけであり、大幅な生育量の増大は確実である。
 来年の春、開花状況を確認するのが楽しみである。

 本年度はミゾソバの繁茂を抑止することはできなかった。しかしながら、勢力衰退の兆候もあり、わずかではありながら生育量の減少が群落内の照度を上昇させ、リュウキンカやコバギボウシの生育量が増加した印象が強い。年月が必要であると考えられるが、一応、それなりの成果をあげたものと考えたい。


ベルトトランセクトの調査風景


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