アカミノイヌツゲ Ilex sugerokii Maxim. var. brevipedunculata (Maxim.) S.Y.Hu (モチノキ科 モチノキ属) |
アカミノイヌツゲは北海道、本州中部以北に分布する常緑低木。岡山県に隔離分布しており、鳥取県との県境にある毛無山に見られる。 高さは2mほどで、草地や岩場、湿原のへりなどに生える。枝はよく分岐し密につく。葉は長さ2-3cmで革質、上方に低い鋸歯がある。雌雄異株で花は初夏。果実は径7mmぐらいで秋に赤く熟する。アカミノイヌツゲはクロソヨゴの変種であり、クロソヨゴの花柄が1.8-2.5cmであるのに対し、アカミノイヌツゲの花柄は1-1.5cmとなることで区別される。 岡山県への分布は、鳥取県の烏ヶ山山頂のミヤマハンノキなどど同様に、氷河時代に分布したものが、他の植物の生育が厳しい場所に生き残り、隔離分布となったものと考えられている。毛無山は新庄村にあり、標高1218mと中国山地では比較的高いほうである。毛無山は県下最大級のブナ林でも有名であり、ブナ林を抜けた山頂の草地にアカミノイヌツゲは生育している。山頂などの急峻な地形の場所では、ブナ帯であってもあるべき夏緑広葉樹林に遷移しにくく、このような低木が生存可能なのであろう。アカミノイヌツゲが毛無山で生き続けてきたという事は、山頂部の草地は案外遠い年月を続いてきたものなのかもしれない。 |
文章・画像:太田 謙 |