モウセンゴケ Drosera rotundifolia Linn. (モウセンゴケ科 モウセンゴケ属
 モウセンゴケは湿原に生育する多年生の草本であり、北半球の温帯を中心とする湿原に広く分布する。葉には腺毛があり、粘液を分泌して小さな昆虫を捕まえる。基本的には根も葉もあるので虫を捕まえなくても生育が可能であるが、昆虫を捕まえることができると開花が盛んになり、多数の種子を形成することができる。葉は鮮やかな赤色を帯び、これが緋毛氈(ひもうせん)に例えられた。
 暖帯の湿原にもよく成育するが、元々寒冷な地方が分布中心であるためか、温暖な地方では高山の湿原に成育するものほど大きくはならず、赤色も鮮やかではない場合が多い。
 ブナ帯や針葉樹林帯に成育する場合には、成育は1サイクルだけであるが、温暖な地域に成育するモウセンゴケは、夏にはいったん勢力が衰え、みすぼらしくなる。初秋には再び新たな葉が形成され、株別れすることもある。こぼれ落ちた種子から新しい個体が発生し、個体数は増加する。分布の中心である冷温帯から亜寒帯では2〜3ヶ月しか成育可能な期間がない。これに対応したライフサイクルが、温暖な場所では2回行えると言うことであろう。
 モウセンゴケは北極を中心として環状に分布しており、周極分布と呼ばれる。氷河期と間氷期が繰り返される中、北極を中心として氷期には南に移動して分かれ別れになるものの、間氷期には北に移動してそれぞれの個体群が出会うことになる。
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