ナツアサドリ Elaeagnus yoshinoi Makino (グミ科 グミ属) |
ナツアサドリは岡山県を中心に、広島県東部から兵庫県西部に分布する落葉の低木。1899年に吉野善介によって発見され、1902年に牧野富太郎によって新種として記載された。アサドリは岡山地方でグミの仲間の呼び名であり、初夏(6月)に果実が熟すので、ナツアサドリという。 葉の表裏にはグミの仲間特有の星状毛があるが、表の星状毛は目立たない。裏面には星状毛があるが、白銀状に密生するものや目立たない個体があって、変化が大きい。葉の表面の星状毛が目立たないので、グミの仲間であることを見落としてしまいがちであり、うっかりするとネジキと間違えてしまうこともある。しかし、枝先には星状毛があり、裏面に注意すればグミ属とわかるはずである。岡山県では注目種であるので、要注意の植物である。花は4月から5月にかけてで、長さ1cm内外。 ナツアサドリの生育地は暖温帯上部を中心とする二次林である。多い植物ではなく、1つの環境アセスメントなどで、数個体が見つかる程度である。マツ枯れ跡地のギャップや道端などの明るい場所で見つかることが多く、生育立地が保護・保全されても森林の遷移によって次第に生育が困難になると予想され、保護・保全の対策は単純ではない。現在の生育状況は、結実していることは少なく、二次林の放置によって次第に減少する植物の1つであろう。 |