トチノキ Aesculus turbinata (トチノキ科 トチノキ属)
 トチノキは北海道西南部から九州に分布する落葉高木。おもに冷温帯域の山地に生育し、高さ30mほどの巨木に成長する。沢筋や谷沿いなどの土壌・水分状態の良好な場所に多い。葉は大きく、5〜7つに掌状に分かれており、天狗の団扇と呼びたくなる。5〜6月に大型の房状花序を付け、白い花を咲かせる。
 近年、都会でも街路樹に植栽されることが多くなった。ヨーロッパのマロニエと同じ仲間なので、そのイメージもあるのかもしれない。乾燥する場所では成長不良であり、粘土質土壌の場所も良くないようである。元々、谷筋の適度に湿った良好な土壌の場所が好きなのであろう。巨樹に育つこともあって、なかなか良い画像が撮れない。この画像は街路樹として植栽されたものである。
トチノキトチノキの果実
栃餅
 トチノキの種子は大きなクリのようであり、灰汁抜きをすると食べられると言う。ちょうど手元の雑誌に食べ方が載っていた。まことに食べられるようになるまでが大変で、縄文時代からの文化であるという。
 苦みの成分は非水溶性のサポニンとアロイン。したがってそのまま水にさらしてもだめなので、木灰でアルカリ中和して除去する。

 種子の採取→水の中に浸けて虫を殺す→乾燥→皮むき→水でさらす→木灰で煮る→さらに灰を加えてそのまま2日ねかせる→木灰から取り出し、水洗→餅米を加えて蒸して餅にする・・・食べる
 (参考:太田 威:朝日連邦、古代縄文食の栃餅づくり.FRONT 11,2001)

トチノキの街路樹
 街路樹には強健で剪定に耐える落葉広葉樹が多く使われてきた。プラタナスなどの外国産樹種が多い中、トチノキの街路樹は新鮮な感じがする。元々肥沃な場所に生育する種であり、乾燥する場所では成長が不良であって、かわいそうな姿になっていることも多い。植栽してから、かなりの期間は成長が不良である。
 ところで、トチノキの街路樹が流行って、思わぬトラブルが発生している。大きな果実が落下し、樹下に駐車している車のボディーを傷つけてしまうのである。東京都では落下する前にすべてたたき落としているらしい。これは結構大変な作業であろう。駐車禁止地域の街路樹としては最適であるが、人の頭に落下するのは問題である。

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