カゴノキ  Litsea lancifolia (Sieb. et Zucc.) F. Vills.   (クスノキ科 ハマビワ属
 カゴノキの樹皮は、成木になると名前のように鹿の子模様に剥がれてくる。木が生長し、太くなるにつれて樹皮は引き延ばされ、剥がれてくるのは当然とも思えるが、剥がれにくい樹木もある。カゴノキのようにモザイク状に樹皮が剥落することは、樹木にとってはどのようなメリットがあるであろうか? 落とさずに付けておいた方が、防御には何かと役立つのではないかと思ったりもする。
 学生とカゴノキを観ている時、彼らが「こんなに皮を剥擬落とされたら、ツル植物はたまったものではないだろうな」と話し始めた。なるほど! ツル植物の内、フジやアケビなどは巻き付いて登るので樹皮が剥がれようが剥がれまいが違いはないが、よじ登るタイプのテイカカズラやツタ、キヅタ、イタビカズラなどは、このように樹皮が剥がれると登りにくいであろう。そのカゴノキは谷沿いにあり、周辺にはたくさんのツル植物が生育していたが、この木にはツル植物はのぼっていなかった。一応、カゴノキの戦略は成功しているように見える。
 直径10cm前後までの若木では、ほとんど樹皮は剥がれない。皮目が目立つものの、普通の樹木の樹皮であり、カゴノキがわかりにくい理由の1つになっている。直径20cm頃になると全面が剥がれはじめ、美しい鹿子模様となる。モザイク状の鹿子模様をよく見ると、新鮮な剥がれた直後のものと、やや色の濃い灰色から灰緑色のパッチ、そして茶褐色のパッチがある。色調は3段階になっており、おそらく3年ごとに剥がれるのであろう。この微妙な色調の違いがカゴノキの樹皮の美しさを増している。
直径10cmほどの若木では、皮目が目立つ普通の樹皮樹皮が剥がれ始めた個体20cmほどになると、全面が剥がれ始める
鹿子模様が美しい成木三段階の模様

1.カゴノキ 2.カゴノキの葉 3.樹皮
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