ヤブニッケイ Cinnamomum japonicumクスノキ科 ニッケイ属
 ヤブニッケイは関東・北陸以西の本州・四国・九州・琉球に分布する常緑の高木。高さ10mほどになるが、高木層を形成するほどには高くならない。温暖な森林に生育し、東アジアの暖温帯に分布している。暖地の二次林には良く見られる種であり、時としてクスノキやシロダモの芽生えと区別しにくい場合がある。花は6月に咲き、果実は秋に黒紫色に熟す。

ヤブニッケイヤブニッケイ
ヤブニッケイの花序開き始めた花(?)雄しべが見える
開いたヤブニッケイの花ヤブニッケイの果実
ヤブニッケイの葉ヤブニッケイの葉(裏面)
虫こぶができたヤブニッケイの葉裏面の拡大
 ヤブニッケイの葉は、ニッケイ属の特徴である3行脈が顕著。葉の長さは6-12cm、幅は2-5cm。葉は楕円形で先端は次第に穂染まってやや尖る。表面は光沢があり、無毛。裏面は灰褐色で無毛。葉柄は長さ8-18mm。

 ヤブニッケイの葉には、葉脈上に点々と虫こぶができる。ニッケイトガリキジラミが作るニッケイハミャクイボフシという虫こぶである。裏面の凹みに1匹張り付いているらしい。クスノキにもよく似たものができるが、ヤブニッケイの場合は、葉脈上や葉脈に沿ってできるのが特徴である。

若い枝の樹皮成木の樹皮
 若枝は緑色で、数年程は鮮やかな緑が残る。成木の樹皮は大きな割れ目はなく、小さな凸凹となって暗褐色。常緑広葉樹林域でヌッペリとした樹皮であれば、ヤブニッケイの可能性が高い。割とだらしない樹形であり、乱れ気味で枝が横に伸びやすい。遷移の進んだ二次林では少なくなる。

 関東地方以西の段温帯域に生育するが、世界的には中国南部の沿岸域から朝鮮、日本に生育する。和名は藪に生える肉桂の意味であり、ニッケイに比べて香りが劣ることを意味しており、香りはとてもニッケイにはかなわないが、ニッケイと類似した使い方もされるらしい。
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