ベニバナツメクサ Trifolium incarnatum Linn. (マメ科 シャジクソウ属) |
ベニバナツメクサは、ヨーロッパから西アジア原産の植物で、牧草として栽培されたものが野生化しているという。ここに掲げた写真は水田に播種されたもので、岡山県の干拓平野で撮影されたものである。花卉としても利用されており、花屋さんなどでは「クリムゾン・クローバー」などというしゃれた名前で,苗が売られているそうです。
昔から利用されてきたゲンゲは地表面を匍匐する茎を出す。この茎がトラクターのローターなどに絡みつくことがあり、化学肥料の普及と共に栽培が廃れる原因の一つであったという。ベニバナツメクサは這う茎を形成しないので、絡みつくことはないと思われ、機械化が進行した現在の農業には利用価値が高いのかも知れない。しかしながら、どぎつすぎる花の色は、田舎の風情とはかけ離れたもののように思える。田舎の風情と有機農業を二者択一する必要があるのであろうか・・・・水田で栽培される緑肥植物としては、ゲンゲがもっとも普通であり、広く親しまれてきた。田舎の風景の一つとしてなじみの深いものである。ゲンゲ(レンゲ草)やシロツメクサなどのマメ科植物は根に根粒バクテリアとの共生組織である根粒を形成し、空中窒素の固定能力がある。この能力を利用し、イネなどを栽培していない期間にこれらの植物を播種して生育させる。その後、田圃にすき込んで緑肥として利用するわけである。 |
(1999.05.15 文:波田善夫 写真:難波靖司) その後の情報(中尾茂樹氏より) 神戸新聞(1999.6.2夕刊)にベニバナツメクサについての記事『赤い緑肥で白ネギ豊作』が写真と共に掲載された。その一部を掲載します。 鳥取県園芸試験場弓浜丘陵地分場(境港市)が春夏の白根気の栽培の緑肥に、マメ科の一年草で近年生花や鉢植え、ドライフラワーとしても活用されている「クリムソンクローバー」を使い、従来の緑肥に比べて約二割増の収穫量を挙げることに成功した。
クリムソンクローバーは作物体が柔らかく土壌中での分解が早い上、有機物の補給と施肥窒素量の低減にも効果的であることから、・・・今後普及させていく考えだ。 砂畑が点在している鳥取県では、冬に砂畑を放置しておくと砂が飛散し周辺の農作物に被害を与えるなどの問題を生じるために、緑肥の栽培が必要。これまではシロクローバーやライムギが主だったが、・・・・雑草化することから、効率化と景観の面から一斉に赤い花を咲かすクリムソンクローバーに着目し、実験した。・・・・その結果、従来よりもに割り増しの収穫を記録した上、品質も向上した。(以下略) 畑に栽培する緑肥としては、シロツメクサは雑草化して周辺の畑に侵入するのでやっかいであるが、ベニバナツメクサは雑草化しないらしい。帰化植物図鑑にも野化しにくい状況に関する文章が載っているので、周辺環境に進出しないのならば、適切な種の選定なのかも知れないと言う気がします。しかしながら、春の「砂丘は真っ赤っか」ということが無いように、要チェックであることは変わりないでしょう。
1.ベニバナツメクサ 2.水田のベニバナツメクサ |