ハウチワカエデ Acer japonicum (ムクロジ科 カエデ属
ハウチワカエデハウチワカエデの葉(裂片は9〜11、葉柄は短い)
裏面:脈腋と主脈上に毛が残る葉柄にもわずかに毛が残る

 ハウチワカエデは本州に分布する日本固有種。低山帯から亜高山の下部に生育するとされるが、分布の中心はブナ林域ではないかと思う。岡山県ではブナ林などの夏緑広葉樹林の尾根筋などの明るい林に生育する。葉身は長さ4.5〜9cm、幅5.5〜11cmで9〜11に浅〜中裂して重鋸歯がある。若葉では両面に白色の軟毛があるが、やがて脱落し、裏面の主脈上と脈腋にわずかに毛が残る。葉柄は長さ2〜4cmで葉の大きさに比べて短く、1/4〜1/2の長さで、成葉でもわずかに毛が残っている。

 葉の形はオオイタヤメイゲツによく似ているが、葉の裂片の数(9〜11)がやや少ないことと、葉柄が葉身の長さ1/4〜1/2と短いこと、葉柄にわずかに毛が残ることなどが区別点となる。ハウチワカエデは、葉の形を天狗の団扇に例えたもの。メイゲツカエデの別名もある。

ハウチワカエデの花序は暗紫色ハウチワカエデの花序は、雄花と両性花が混ざる
急速に成長する翼雄性花の拡大
 ハウチワカエデの花は5月から6月の始めにかけて咲く。長い緑色の花柄から数cmの赤味を帯びた花柄を分け、雄花と両性花を付ける(雄性同株)。花弁に見えるものは萼片であり、暗紫色で長さ6-7mm。萼の内側にある曲がったものが花弁ではないかと思う。図鑑には淡黄色であると記されているが、ここに掲載したものは萼よりも薄いものの、赤紫色である。これが花弁であるとすれば、脱落しやすいものと思われる。両性花は最初柱頭が突出し、その後急速に子房の翼が成長する。雄花の開花には時間差があるようで、おしべは8本。
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