ヤマグルマ Trochodendron aralioides (ヤマグルマ科 ヤマグルマ属)
 ヤマグルマは山形県以西の本州・四国・九州、台湾・朝鮮南部に分布する常緑の高木。谷筋・露岩の見られる急傾斜地などに生育する。岡山県ではブナ林域に生育するが、主要分布域では暖帯に生育するという。高さ20m、太さ1mにも生長するとのことであるが、小生は低木程度のものしか出会ったことがない。暖帯では高木に育つものの、寒冷な地域では低木程度にしか育たないのかもしれない。
 枝打ちは荒く、若枝の色は緑色。葉は枝の先に輪生状に付くことが多く、2〜9cmの長い葉柄を持ち、葉身の長さは5〜14cm。基部はくさび形から円形で先端はやや尖る。縁には円弧状の高さの低い鋸歯があり、表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色で両面無毛。5月から6月頃、10〜20個の黄緑色の花を付けた花序を形成するという。樹皮からは、良質のトリモチがとれたらしい。
 ヤマグルマは1科1属1種の近縁種のない特異な植物であり、東アジアに特産する。また、導管を持たない被子植物としても有名であり、裸子植物の形質を維持している古いタイプの被子植物である。導管は境目のないパイプであり、水分の通道に関しては仮導管に比べて能率が高い。能率の悪い仮導管のみでの水分供給システムは、冬季の凍結には有利であるかもしれないが、大きな葉を多量に形成するには不利なものであろう。
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