カキノキ Diospyros kaki Thunb. (カキノキ科 カキノキ属)
カキノキは本州、四国、九州、朝鮮、中国に生育する落葉の高木。大きな広い楕円形の葉であり、6月頃に目立たない緑色の花を咲かせる。山に生育しており、葉に毛が多く、子房に毛があるものをヤマガキ(var. sylvestris Makino)というが、栽培品種からの実生や雑種もたくさん山に生育しており、様々な形態・サイズのものがある。子房の毛以外に決定的な区別点がないようで、区分は容易ではない。小生はあまり気にしないことにしている。
渋いものと甘いものがあり、甘いカキは日本で品種改良された。現在果物として販売されているもののほとんどは外国から導入されたものであり、日本に自生する種から品種改良・作出されたものはカキぐらいしか思い当たらない。
カキの種はいくつ?
カキの果実を横に切ってみると、写真のようである。種子は6つであるが、稔らなかった2つが筋として見えている。これを足すと、合計8つの胚珠が準備されていたということがわかる。そのつもりで花を見ると、四角形であり、ガクも4枚であることがわかる。じっくりとカキの裏側を見たことは無いかもしれないが、ガクはそのまま残っており、4枚なのです。基本数は4であるということになり、カキの果実は縦に4つに切ると、うまく切れる可能性が高いということになる。
シブガキ
カキの渋は、タンニンである。果実が青い時期はタンニンは可溶性の状態であり、食べると舌にまとわりつく感じで、じつに渋い。まだ食べて欲しくない!とカキが主張しているわけである。食べて欲しくなると、果肉に含まれていたタンニンは化学変化し、不溶性となる。果肉に含まれているゴマがそれである。不溶性である物質は、味覚にも、栄養的にも無関係であり、おいしく食べることが出来る。
渋柿から取れるタンニンはビニールが出来るまでは重要な物質であった。シブガキを青いうちに採り、臼にいれて突き砕き、袋に入れて果汁を搾り出す。搾り汁は多量のタンニンを含んでおり、黒紫色を帯びたものであった。これを瓶などに入れて、保存しておく。
タンニンは、樹木の幹などにも含まれており、防腐効果がある。採取したタンニンを紙に塗ったものを「渋紙」といい、水に強いので、傘(和紙と竹でできた傘)、提灯などに使用した。渋紙は苗代を作る際の保温にも使用され(紙製のビニールハウス)、まだ寒い時期にイネの苗を育てるのにも活躍した。魚網に柿渋を塗ると腐りにくくなるし、建物の土台や雨戸などの濡れやすい場所にも防腐剤としての塗布は欠かせないものであった。
このように渋柿はビニール製品が安価に供給されるまでの人間生活には欠かせないものであった。農家の段々畑の傍に必ず柿が植えられていたのも、そのような利用のためでもあった。柿渋に自然にやさしい防腐剤として、再び登場して頂かなければならない。
柿の種
熟した柿の種のまわりには、つるりとした寒天状のものがついている。この部分は味が無い。熟柿を食べていると、種をツルリ!と飲み込んでしまう原因となる。柿は鳥に種を遠くに運んでもらいたいわけであるが、その為には食べられる必要がある。普通であれば、大きな種はつつき出されてしまい、鳥に食べられる可能性は低いと思う。しかし、この寒天状の物質が大きな種子のまわりにくっついているために、かなりの率で、鳥は種を食べてしまうのではないかと思う。巧妙な仕組みであると感心してしまう。
カキノキの枝はよく折れる
渋柿は干し柿にも加工される。干し柿を作る際には、枝ごと果実をとって、皮をむいて吊り下げるわけであるが、この際には枝がついた状態でないと、縄につるせない。枝がついた状態でとるために、竹の先端を割ったもので挟み込んでとったものであるが、簡単に枝が折れるので、枝先のものもとることが出来た。
毎年、カキノキの枝先は折り取られるわけであるが、特に果実のなりかたには問題がない。というのも、新しく伸びた枝に花芽が形成されるためである。サクラやツツジなどは前年の夏に花芽を作るので、秋に枝を剪定してしまうと花が咲かないことがあるが、カキノキは心配ないわけである。