ピンギュイキュラ・ブルガリス Pinguicula vulgaris (タヌキモ科 ムシトリスミレ属) |
野生のムシトリスミレを見たいと思っていたが、その機会が無かった。ムシトリスミレは崖などの岩場に生育するそうで、その目的でなければ出会えそうにも無い。この度、スコットランドを調査する機会を得たが、ヒースの荒野で仲間を観察することができた。日本のムシトリスミレは P. vulgaris の変種とされていたが、最近はアメリカの系統であることがわかったとのこと。その観点からは、P. vulgaris はセイヨウムシトリスミレと名前をつけたくなる。 P. vulgaris はヨーロッパからユーラシア大陸に広く分布する。スコットランドで見つけた生育地は、やや急な斜面の湧水地からの流路周辺であり、日本の生育地である崖とはやや趣は異なっているが、根から栄養分を吸収しにくい立地という点は共通しているのであろう。泥炭地では見つけることができず、基本的には無機土壌上に生育するのであろう。撮影した季節は5月の末であり、春になったばかり。最初の花が咲いたばかりであり、もう少しすると2番目、3番目の花が持ち上がって更に美しくなるのであろう。青紫色の花は、合弁花であるが、距が伸びてスミレの花とそっくりである。花茎にも腺毛があるが、葉の表面にはビッシリと腺毛がある。葉の中ほどから先端にかけては球体状の腺毛があり、基部になるほど柄が長い腺毛が付いている。昆虫が捕まっており、美しい花は昆虫を引き寄せるため?と言いたくなってしまう。葉の縁は虫の脱出を防ぐためか、内巻きになっている。 英語名はCommon Butterwort 普通種のバター草という訳になろうか。バターは、葉の表面が粘液でヌメルからであろう。【食虫植物】 |
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