ヒメシロアサザ Nymphoides coreana (Lev.) Hara (ミツガシワ科 アサザ属)
ヒメシロアサザは,本州以西の湖沼,ため池,水田などに稀に生育する浮葉植物である。同属には,同じく浮葉植物である
アサザ,ガガブタがある。これらアサザ属の浮葉植物は,どれも葉がよく似ており写真などで見ている限りあまり違いがわからない。強いていえば,アサザには波状の低い鋸歯があり,ヒメシロアサザには葉の表面に斑模様が見られるということぐらいではなかろうか。ちなみに下の写真ではあまりその模様は顕著でない。
花は3種3様で,アサザは黄色,ガガブタは白色で花びらに毛が多い,ヒメシロアサザも白色であるが,毛が花びらの縁にのみあり,遠目には目立たない,などといった違いがあり,花が見られることにこしたことはない。
その他,ヒメシロアサザとガガブタは,アサザのように地下茎或いは地下茎から発達する水中茎を持たないという特徴がある。図鑑には見かけ上の葉柄などと記載されており,節や花序が形成されるまでは,水中茎か葉柄であるかの区別が難しいという。
ヒメシロアサザは,株から放射状に浮葉を持つ葉柄が伸長することにより,個体として成長していく。晩夏から初秋にかけての開花結実期には,葉に近い辺りの葉柄に節が形成され,花序が発達する。この節からは新たに(見かけ上の)葉柄が一本形成され,その葉柄にはまた節が形成され,花序も形成される(生育期間中はスペースがある限り繰り返されると思う)。おそらく浅瀬では,葉柄に形成される節から発根もするはずで,栄養繁殖による分布拡大も行っているように見える。見かけ上の葉柄は走出枝の役割を果たしているのではなかろうか。
試しに,何のへんてつもないように見える葉柄+浮葉を1つ,自宅の水槽に持ち帰って浮かべておいた。しばらくして葉柄には節が形成され,花序(花序といっても開花はしなかったと思う)と根が発生した。しばらくして結実し(自家受粉?),晩秋になると溶けて,沈んでわからなくなった(来年出るかな?)。
ヒメシロアサザは,日本各地で消滅が相次ぎ絶滅危惧種となっている一方,岡山県南部では水田雑草としてはびこるという事態もみられるという。下の写真は(財)岡山県環境保全事業団の近所の水田でのものである。なるほどはびこっているが,このような光景(場所)が,そうざらに見られるわけではないように思う。