マンリョウ Ardisia crenata (ヤブコウジ科 ヤブコウジ属) |
マンリョウは東アジアの暖温帯から亜熱帯に広く分布する小低木で、高さ70cm程度にまで生長する。日本では照葉樹林帯に生育する。葉には丸い鋸歯があり、本種の大きな特徴である。茎は年月を経過してもあまり太くならず、果実をたくさん稔らせると頭を下げてしまう場合も多い。根元から新しい幹を出して株立ちとなる。和名は「万両」の意味であり、センリョウと比較して、より果実がたくさん付き、美しいとの意味であるという。鉢植えで栽培されることも多く、庭園にはモッコクの根元にセンリョウとあわせて植栽し、「千両、万両持ち込む」と読ませて縁起を担いだという。 マンリョウ、ヤブコウジ、センリョウなどは7月前後に花を咲かせ、秋から初冬にかけて果実を朱色に熟させる。花のない正月にこれらの植物を飾りに使う習慣は、クリスマスのヒイラギを飾る習慣とよく似ており、興味深い。このような冬に果実を実らす植物は、冬季の野鳥には貴重な食料となっているはずと思うものの、ナンテンと比べると、意外に残っている場合が多く、美しい外見に比べて美味しくないのかも知れない。花は初夏に咲き、昼に咲いて夜には閉じる、1日花である。 ところで、アメリカのフロリダでは日本から持ち込まれたと思われるマンリョウが人家の周りから二次林に広く繁殖しており、Exotic Pest Plants(帰化有害植物)に指定されているという(北島薫[jeconet:3855] )。林床の90%を覆っている場所もあり、あまり鳥が食べないので周囲に実生がびっしり生えているとのこと。テキサスやルイジアナにもどんどん広がりつつあるそうで、日本ではまことにおとなしいマンリョウも、未開の地に解き放たれてわがままになったようである。このように、異なった地域に移動した動植物が、原産地とは全く異なった生活様式を行って爆発的に繁殖することは数多く報告されている。 |
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