ギンリョウソウ Monotropastrum humile (イチヤクソウ科 ギンリョウソウ属
 春の山を歩くと、谷筋や斜面下部などでギンリョウソウが落ち葉を持ち上げて伸び上がっているのに出会う。山を下っていると落ち葉の下に生育しているのがわからず、踏みつけてしまうこともよくあって、かわいそう。首をかしげた姿はタツノオトシゴをイメージさせ、銀竜草という名前は納得である。花を下から覗くのは、茎が折れてしまうのでかわいそうであるが、雌しべの先端の柱頭がシックなブルーであり、なかなかシャレて美しい。
 ギンリョウソウは白色で色素を持たず、標本にすると黒変してしまうので、面影はまったくなくなってしまう。落葉が厚く堆積する場所に生育することが多いので、腐生植物であると考えられており、図鑑にもそのように記載されている。落葉を直接ギンリョウソウが利用するのではなく、落葉を菌類が分解し、それをギンリョウソウに提供しているのである。ところで、菌類は落葉だけではなく、生きている植物にも接続していることがわかったそうで、ギンリョウソウと生きている植物、そして落葉は菌類によって相互に連結されていることになる。その関係の中で、ギンリョウソウはちゃっかりと養ってもらっているのであり、その意味では寄生植物というのが正しいのかもしれない。美しくか弱いギンリョウソウであるが、実にしたたかな植物である。
 よく似た植物にギンリョウソウモドキがある。ギンリョウソウは4月から8月にかけて咲くが、ギンリョウソウモドキは8月から9月にかけて咲くことで区別できる。
ギンリョウソウ Monotropastrum humile
ギンリョウソウの花ギンリョウソウの花
太い青色の雌しべの周囲に雄しべが取り巻く青い雌しべの柱頭
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