ヒヨス Hysocamus niger  (ナス科 ヒヨス属
 この植物に出会ったのはモンゴル・ウランバートルの古生物研究所の敷地内。同定できたのはカナディアンロッキーの植物サイト。ナス科には違いないと思っていたが、なかなかヒットしなかった。原産地はヨーロッパからシベリア、中国やヒマラヤなどとの記述があるので、モンゴルも原産地である可能性もあるが、生育地は帰化植物にふさわしい場所(川原と都市内の草地)であった。ちなみにモンゴルの草原では発見することはできなかった。現在では世界に広く帰化しているとのことだが、日本には自生しないらしく、帰化植物図鑑には掲載されていない。かなり寒冷な地域が生育地ということになろう。

 ヒヨスは高さ1mほどになる草本。全体に毛が多くて臭気が強く、葉は単純な形から不ぞろいな鋸歯があるものまである。茎の先端にクリーム色の地に黒紫色の網目模様があり、シックな花である。直径は2〜3cmであったと思う。鎮痛や鎮静作用などがあって薬用で使われるとのことだが、毒性が強いので劇薬として扱われるとのこと。チョウセンアサガオなどと組み合わせて麻酔薬として用いられてきた歴史があり、毒殺にも使用されたという。この植物に触った手で目を擦ると瞳孔が開いてしまうとのこと。随分としっかりと触ってしまったが、眼をこすらなかったので大丈夫であった。

 英語名は(Black) henbane、Stinking nightshade。hen-baneは雌鳥の毒(頭痛)の意味となるが、語源的には死+毒という意味ではないかの記載あり。後者は「臭い(忌々しい)夜の闇」というニュアンスであろうか。毒殺とか、時には媚薬として、また麻酔薬として使われてきた。草食獣にも強い毒性で、食べられることから逃れてきた植物の1つである。和名は学名の先頭部分とのことだが、よく分からない。
種名一覧科名一覧雑学事典目次Top生物地球システム学科