クロバイ Symplocus prunifokia (ハイノキ科 ハイノキ属
 クロバイは関東地方以西の本州・四国・九州・琉球、朝鮮南部に生育する常緑高木。丘陵地帯の山頂や尾根筋などの乾燥した立地に生育し、岡山県では沿岸部に生育する。葉は長さ4-8cm、幅は2-3cm。革質でやや厚く、濃緑色で両面無毛。5月頃、葉腋から総状の花序を出す。果実は楕円形で長さ6-7mm。秋に黒紫色に熟す。
 クロバイの和名は、ハイノキと同様に灰を染色の媒染剤として利用したことに由来し、葉の色がハイノキに比べて濃いことを意味している。クロバイの葉は葉緑素を沢山含んでいるようで、しかも大量に葉を付ける。このために生育している樹木を遠望すると、暗緑色に見えるし、クロバイの樹冠の下は非常に照度が低く、ほとんど無植生になってしまう。
 クロバイの根を掘ってみると、垂直方向に伸びる直根は発達せず、太い根が地表面直下を横に這っている。尾根などの土壌の浅い場所に生育しているので、広い範囲に根を張って、水や栄養分を求めているように見える。大きなクロバイを保存しようと移植してみたことがある。幹から伸びている根は太くて本数も少なく、細根もないので移植しても活着は困難と思われた。しかし、結果的には活着率が非常に高く、ほとんどの個体は移植に成功した。太い根からも活発に発根できる能力とともに、恐らく水分を蒸発させない葉の調節能力も大きいのであろう。このような能力が尾根などの土壌の浅い立地での繁茂を可能にしている。
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