クワズイモ Alocasia odra (サトイモ科 クワズイモ属) |
クワズイモは四国・九州の南部・琉球、中国・インドシナ・インドの暖帯から亜熱帯に生育する大型の多年草。常緑広葉樹林の谷筋や林縁などに生育し、高さ1m程になる。葉は大型で、1m程の長く太い葉柄の先に付き、長さ幅ともに60cmほど。中脈が明瞭で、両側に9〜13対の側脈が平行に走る。最下部の側脈は太く明瞭で下側に伸び、さらに平行な支脈にわかれる。こんな大きな葉は谷底などの風が吹かない場所でないと維持できないであろう。 葉を裏から透かしてみると、なんとも面白い風景が浮き出る。単子葉植物なので、平行脈であり、葉緑素の濃淡が流れるような模様となっている。表からもほんのりと見えはするのだが、裏から太陽光を透かしてみると、その様子がよく見える。もともと太陽光が不十分な半日陰に生育するので、葉緑素の量にばらつきがあっても特に問題にはならないのではなかろうか。 花は4月から8月にかけて咲き、円柱状の花序を緑色の苞が覆っている。花序の下部には雌花が付き、真ん中は稔らない花(仮雄蕊)、その上部に雄花が付き、先端部にも仮雄蕊が付く。苞が開いて見えている部分は雄花の部分とその先端の仮雄蕊の部分らしい。花が終わると開いている苞の部分から上は脱落し、隠れている雌花の部分だけが残り、果実となる。若い花と熟した果実が同時に見えるので、花が咲いてから稔るまでにはほぼ1年の年月が必要なのであろう。 クワズイモはサトイモによく似ているが、芋ができず、有毒であるからであるという。亜熱帯を実感させる植物の1つである。英語名はNight-scented Lily、 (giant) upright elephant ear 「夜のよい香りがするユリ」であるから、目立たない花は夜によい香りがするのであろう。また、「大木立象の耳」はイモではなく太い根茎で立ち上がる象の耳という意味であろう。 |
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