マツバスゲ Carex biwensis
マツバスゲ Carex biwensis カヤツリグサ科 スゲ属

 マツバスゲは湿地に生育する多年草。葉は幅1mmほどで花茎に比べて短くてほとんど目立たず、花茎ばかりが目立って葉がないかの如く見える。湿原の調査は、夏から秋にかけての季節が中心で、スゲの仲間がおろそかになってきた。中部山岳地帯の湿原では夏の期間が短く、夏から秋に調査をすれば、春に開花するスゲの仲間も秋に開花・結実するイネ科などの植物も同定が可能なのだが、温暖な低地の湿原では春のスゲと秋のイヌノハナヒゲ属やホシクサ科植物などが生育していて、1回の調査ではわからないことも多い。マツバスゲもそのような植物のひとつで、夏には確認できなくなってしまう植物のひとつである。

 根系はしっかりとしており、簡単には抜くことができない。おそらく、しっかりと根系を地中に張り巡らしており、沼沢地に生育する植物の性質を顕示している。砂地を好むようで、この点は同じ湿地に生育するハリガネスゲが泥地に生育する傾向が高いこととの違いであると思う。マツバスゲとハリガネスゲはよく似ているが、マツバスゲは茎が丈夫でしっかりと立ち上がるが、ハリガネスゲは茎が軟弱で他の湿生植物の間から顔をのぞかせる、あるいは寄りかかる、垂れさがるイメージである。当然茎の長さが違い、マツバスゲは20cmまでで立ち上がり、ハリガネスゲは30cm前後で寄りかかる生育形である。しかし、6月になると種子も稔って重くなり、花茎も長くなって寄りかかり、両種の区別はだんだんむつかしくなる。

マツバスゲ マツバスゲ
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