テンキグサ Leymus mollis (イネ科 エゾムギ属
 千葉県は銚子の砂浜海岸に元気のよいイネ科植物が生育していた。葉はしっかりしており少々の風では痛みそうもない。草丈は風の弱い場所では高さ1m近くにもなってこんもりと茂っている。ハマニンニクと憶えていたが、図鑑にはテンキグサという名前が標準和名に採用されていた。天気草?と解したくなるが、アイヌの人たちがこのしっかりとした葉でテンキという入れ物や手提げ袋を作ったので、そのような名前がつけられたとのこと。ガマ細工と一脈通じるものがあるが、葉の丈夫さから見ると、こちらのほうが長持ちしそうである。

 清末忠人・清末幸久(2014)にこの植物がハマニンニクとして紹介されている。天気草と教えられて信じ込んでしまっていた逸話とともにテンキグサの面白い点にも言及されている。その1つは、葉が途中から裏返ることで、本来の表が途中で反転して裏側になってしまう。イネ科の植物には、このように裏を表にしているものが結構ある。葉の表を上にして葉を強く下向きに引っ張ると葉鞘が簡単に裂けてしまう。このようなイネ科植物特有の構造的欠陥の弱点を回避するのが、この裏を表にするということだと小生は考えている。葉の裏面を表として使うことで、強風に耐える能力を高くしているというわけである。

 テンキグサは太平洋岸では関東北部以北、日本海側では中部地方以北の砂質海岸に生育する。長い地下茎を発達させて砂丘を安定化する能力がある。花穂は5月ころに形成され長さ20cm前後。葉の幅は1cm強、表は粉白色を帯び、裏面は光沢があって緑色。中部以降は裏面が上面になる。
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