エヒメアヤメ Iris rossii Baker (アヤメ科 アヤメ属) 岡山県絶滅危惧種
 岡山県鴨方のエヒメアヤメ生育地は明るい刈り取り草地であった。地元の保護団体によって刈り取りが行われており、植栽も行われている。エヒメアヤメは夏も緑葉を維持している。したがって、このような小さな植物が生育していくためには、春から秋の展葉期間中に競合する草丈の高い植物があまり生育していないことが必要であることになる。この生育地のように、継続的に丁寧な刈り取りが行われる里山のような環境では生育が可能であることになる。しかしながら、里山のほとんどは放置されてしまい、昔の生育地の多くは失われてしまった。
 さて、人類が活発な農業活動を行う前にはこのような環境はどこにあったのであろう? 人工的に保護してやってもなかなか個体数が増えない植物であり、株立ちにはなるものの、地下茎で広がっていく植物でもない。種子はみたことはないが、少なくとも風で散布されることはないであろう。このように分布拡大能力が高いわけではなく、繁茂する能力も低い小型の植物が長期間にわたって生き残ってきたことの不思議さを考えざるを得ない。


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