ヒマラヤスギ Cedrus dendara Loud. (マツ科 ヒマラヤスギ属
 ヒマラヤスギは名前のとおり、ヒマラヤの亜高山帯が原産の常緑高木。ヒマラヤシーダー(スギの意味)とも呼ばれる。明治初期に導入され、庭園木として利用されている。

球果をつけたヒマラヤスギ
ヒマラヤスギの樹形ヒマラヤスギの樹形
短枝の葉球果をつけたヒマラヤスギ
長枝の先端若い枝には淡褐色の毛葉の気孔列
 ヒマラヤスギの葉はやさしく見えるが触ると結構痛い。長く伸びる勢いの良い枝は長枝といい、1本づつ葉が出ている。この長枝からは毎年ほとんど伸びない短枝がでて葉がかたまって付く。光が十分当たる場合には、伸びずにその場所で毎年同じように葉をつけることのほうが、経済的だからである。

2000年9月19日兵庫県飾磨高等学校にて2012年6月24日 岡山市
若い雄花序球果(8/16)
落下した雄花序シダーローズ
落下した雄花序シダーローズ
鱗片プロペラのある種子
散った鱗片芽生えたヒマラヤスギ
 ヒマラヤスギの雄花序は夏には目立ち始め、小さな松毬状のものが枝上に点々と見える。長く伸びて花粉を放出するのは11月から12月にかけてで、この頃に小さな雌花序もあるはずなのだが、まだ見ていない。球果は翌年の夏には立派に生長しているのだが、梢にできるのでなかなかお目にかかることが無い。

 10月の終わりには茶色くなって鱗片が開いているのが見られた。11月の終わりには鱗片がバラバラになって落下していたので、この頃に種子散布するのであろう。球果の先端部はばらけずにまとまった形で落下する。これがバラの花のようであるので シダーローズとよばれ、クリスマスのリースなどに珍重されている。


枝を挿し木したと推定される香川県栗林公園のヒマラヤスギ整った樹形のヒマラヤスギ(おそらく実生)
挿し木からと思われるヒマラヤスギ実生と思われるヒマラヤスギ
新宿御苑のヒマラヤスギ、枝が荒い枝は下側が生長する
 ヒマラヤスギは播種と挿し木で繁殖される。導入された初期には、若木では球果を形成しにくいことから、挿し木で苗木が作られたことが多かったのであろう。各地の古木は挿し木によって苗木が作られたために枝としての性質が強く残っているものが多い。種からのものは幹の太さの割には枝が細いが、挿し木のものは枝が太くて荒く、樹形が乱れる傾向が強い。

 新宿御苑の古木も枝の出方が荒い。おそらく挿し木苗から育ったものであろう。下のほうの枝の太さが半端ではない。邪魔になるので切った枝の断面が面白い。下側ばかりが生長している。枝の年輪数は55ほど数えることができた。撮影は2004年なので、切り落としてあまり年月が経過していないようなので、1945年ころに植栽されたものであろう。
横から見たヒマラヤスギの根系(とても薄い)裏から見たヒマラヤスギの根
 根は他の針葉樹と同様に比較的浅いようで、樹高が高くなると台風などで倒れやすい。枝葉を間引くなどの剪定作業が必要であろう。ヒマラヤの生育地では傾いてお互いに寄り添った状態(酔っ払いの木)になっているものが多いとのことで、もともと倒れやすい樹種なのであろうと思われる。

 ヒマラヤスギが幹の上部で切られ、枯れてから引き倒されたものを見る機会があった。生育していたのは普通の宅地で特に土壌状態が悪いわけではないが、なんとも薄い根系であり、表面のみしか張っていない。これでは倒れるのも道理である。倒れて枝が地面に付けば、そこから発根して再生し、領土を広げるなどの戦略ぐらいはやりそうである。
種名一覧科名一覧雑学事典目次Top