ウチワゴケ Crepidomanes minutum (コケシノブ科 アオホラゴケ属
 ウチワゴケは大きなコケ植物よりも小さなシダ植物。ついつい見逃してしまうほどの大きさである。生育地は岩壁であることが多く、小生の経験では、渓谷や霧のかかりやすい花崗岩の垂直に近い岩壁であることが多い。花崗岩が大好きと思っているのだが、小生の活動範囲での話で、世界的には花崗岩の無い場所もあって、気候条件によって岩壁や樹木など、さまざまな基物に生育できるらしい。

 サイズ的には完全にコケ植物と競合する。小さな匍匐タイプのコケには勝てそうであるが、カサゴケなどではサイズ的には互角であろう。細い地下茎があるとのことで、地下茎で群落を広げることができる点ではコケよりも広がる能力が高いのではないかと推測するが、コケ植物よりも生育数が少ないところを見れば、コケとの競争は簡単には勝てないのであろう。

 葉は葉脈の部分を除いて単細胞の厚さであるようで、この点でもコケ並みである。撮影した画像を眺めていると、丸いラッパ状の物が写っていた(中段右の画像)。これが胞子嚢群であるという。もう少し注意して観察すればよかったとの思いがあるが、これ程度のサイズの構造物は老眼にとっては現地確認は難しい。

 学名で検索してみると、広く世界に生育しているようで、ハワイのリストにも掲載されている。熱帯でも寒冷地でも、霧のかかるような立地が共通点なのであろう。英語名は tiny bristle fern 小さな密生するシダという訳になろうか、ちゃんとシダ植物として認識されている。
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