結果と考察


C3.暖温帯まで分布する種 クロモジ・コシアブラ・イヌシデ等

 本種群はWI80℃未満の冷温帯域に分布の極大を持つものの,主にWI110℃未満の吉備高原以北に分布している。海抜に関しては,低地では見られないという点以外,主だった特徴はないが,年降水量に関しては,約1600o以上の地域で出現頻度が高くなる傾向が見られる。

ツルシキミ・カツラ・ゴマギ

 本種群の中では冷温帯域における分布の極大が最も顕著で,傾向としては前種群C2に近い。

クロモジ・ホオノキ・コシアブラ・ニワトコ・ヤブデマリ・タムシバ

 ツルシキミ等と似た分布傾向を示しているが,吉備高原面においても比較的普通に見られる。

イヌガヤ・イヌシデ・ダンコウバイ・ツリバナ・ヤマボウシ・レンゲツツジ・オニグルミ・イソノキ

 吉備高原面から脊梁の麓まで比較的普通に見られるが,脊梁付近では出現頻度が低減,或いは欠落している。

エゴノキ・アカシデ・ウワミズザクラ・リョウブ・アオハダ・マユミ

 WI70℃未満の地域にわずかな分布の極大が見られることから,暖温帯上部に分布中心を持つB3と区分したが,類似性は高い。吉備高原面から冷温帯域にかけて普通に見られる種である。これらの種は,先駆的或いは二次的要素の性格を持っており,種群A5aA5bと重複する暖温帯域では,コナラ・アベマキの優占する二次林の構成種となっている。この地域の照葉樹林化が進行すると,衰退する種があると考えられる一方で,照葉樹林化が進行しにくい中間温帯域においては,当面の有力種と考えられる。

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岡山県における植物分布要因の解析
出典:難波靖司・波田善夫,1997.岡山県自然保護センター研究報告(5):15−41.
最終更新日:2000/07/07