一年草とは? (=越年生の二年草、二年草)



一年草とは?
 芽生えて開花結実し、種子を散布すると寿命を終える植物が「草本」であるが、温暖な地方では多年生の草本(あるいは木本)である植物が日本では冬季に枯れてしまうので、一年草となってしまう場合もある。その意味では、一年草と多年草(木本)の間には厳密な区別はないが、地域を限定すれば、それなりに明確な区分が存在することになる。どちらにしても、個体としての死が訪れる前に種子を形成していることは、必要である。

二年草も一年草
 一年草には、大きく分けると2つのグループがある。1つは、春に芽生え、夏から秋にかけて開花・結実し、種子を散布して寿命を終える植物群である。これらの中には、上述のように、本来ならば多年草(木本)であるのだが、冬季の低温によって枯れてしまうものも含まれる。これらの多くは栽培植物や帰化植物である(例:ナストマト)。
 もう一つのグループは、秋に芽生え、春から夏にかけて生長し、開花・結実して個体としてのライフサイクルを終えるもので、生育期間としては1年以内なのであるが、年としては正月をまたぐので、2年間となる植物群である。これらについては「越年草」とか「二年草」とも呼ばれるが、生育期間は1年以内なので、1年草と呼んで差し支えない。近年はこれらをまとめて一年草と呼ばれることが多くなった。

一年草はきれい好き?
 一年草は毎年小さな種子から芽生え、大きく生長する。大きな種子であれば、他の植物との競争能力は高くなるが、新たな場所への分布能力は低下してしまう。かくして一年草の特質を活かすためには、小さな種子からのスタートにならざるを得ない。従って、競争者の居ない裸地を求めての放浪を余儀なくされていることになるが、一年草にはそれなりのメリットがある。
 多くの共存植物のいる草地には、競合する植物だけではなく、病原菌や病害虫なども居る。植物が毎年同じ場所に生育するためには、これらへの対策も必要であるし、競合植物の生産する生育阻害物質によるアレロパシーも大きな問題である。このような難問に対処するよりも、毎年引っ越しをする戦略を取っているのが、一年草であるといえよう。一年草は汚れていない新生の裸地を求めて、さまようわけである。


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