身近な生物学T 春1学期
2.生命の黎明期
    誕生した生命によって地球環境は大きく変えられた。
    命題:@光合成の概念の理解
        A光合成によって変化していった原始海洋と大気はどのように変化したか
(1)化学合成から光合成生物の誕生へ
    @CO2を還元して有機物を作りたい! 水素の化合物から水素を取り出して利用しよう!

       H2X→X+2〔H〕

    Aできた水素でCO2を還元する!

       CO2+4〔H〕→CH2O+H2O

    この過程の結果、X(廃棄物)とCH2O(有機物)、水ができる。
    H2XがH2Sである場合、硫黄が廃棄物として排出されることになる。この硫黄は酸素ガスの存在下ではさらに燃焼されて、硫酸を発生する(硫黄バクテリア)。

    H2XをH2Oで行うにはかなりのエネルギーが必要であり、このエネルギーとして光を使う光合成細菌(シアノバクテリア)が誕生することになった。この場合、廃棄物Xは、酸素である。

(2)光合成が行われるようになると
    @鉄鉱石の誕生
      原始海水中には多量の鉄イオンが存在していたが、遊離の酸素ガスはほとんど存在していなかった。シアノバクテリアが誕生し、光合成を開始すると海水中の鉄イオンは酸化し、酸化鉄となって沈殿した。その年代は、22〜27億年前と推定されている。沈殿物は赤鉄鉱となり、オーストラリアなどから日本にも輸出されている。

      赤鉄鉱:Fe2O3
      褐鉄鉱:Fe2O3・nH2O
      磁鉄鉱:Fe3O4

      Feバクテリア 画像

    A石灰岩の生成
      炭酸同化作用では、CO2が還元されて有機物となる。この過程で、CO2はシアノバクテリアの周囲から減少していくことになる。その結果、炭酸カルシウムが沈殿することになる。

      CO2+H2O→H2CO3    二酸化炭素が水に溶けると弱酸の炭酸となる

      Ca(OH)2+2H2CO3→Ca(HCO32+2H2O  水酸化カルシウムと炭酸が反応すると重炭酸カルシウムになる

      Ca(HCO32⇔CaCO3+H2O+CO2 平衡状態:二酸化炭素が増えると左に、減ると右に

      参考資料:気体の水に対する溶解度

      石灰岩関係画像

    「石灰岩は生物が作った」、「鍾乳洞は生物が作った」ということが理解できたでしょうか?

読みきり囲み記事
     水の密度は約4℃のときに最大の1となり、それ以下では密度は低下し、0℃で結晶化して氷となるが、その際1/11体積が増加する。すなわち、4℃よりも水温が高くても低くても軽くなる。固体となるときにはさらに軽くなり、水に浮かぶ氷となる。

     水が凍ると体積が増加する。この現象が生命体内で起こってしまうと、細胞が破裂することがあり、組織も破壊されることがある。寒冷に弱い植物は容易に凍り、組織と細胞が破壊されて凍死してしまう。

     水が冷却されると重くなって沈む。従って、深い湖や海の底に存在する水の温度は4℃である。もし、海の底の水がさらに冷却されることがあるとすると、その水は軽くなって水面に移動し、氷になっていくことになる。この結果、池や湖は必ず水面から凍っていき、水底が凍ることはない。もし、池の底から凍っていくということになれば、池や湖に生育・生息できる動植物はほんのわずかであろう。深い海の底の水は年中4℃なのである。

     氷は液体の水よりも密度が小さい異常液体である。氷に圧力をかけて体積を10%ほど減少させると氷は融けて液体の水になる。これがスケートの滑る理屈である。

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