U 植生遷移 Succession
(2)二次遷移
 何らかの原因で、在来の植物群の大部分が失われた立地に起こる遷移。新たな侵入や残存する根や種子などの発育によって再生する植物が初期ステージを担う。伐採・山火事・洪水・崖崩れなどの場合にみられ、一次遷移の途中から始まっていると考えられる。通常、土壌が残存しており、繁殖子も多数存在することから、植生の発達は一次遷移に比べて早い。

A.クヌギ−コナラ型薪炭林
 コナラクヌギアベマキクリなどの落葉広葉樹を優占種とする二次林。関東平野において農用林として維持されてきた「武蔵野の雑木林」が有名。クヌギ・コナラなどの高木種は伐採された切り株からの萌芽再生によって更新する。典型的な例では、萌芽した芽は勢いのよいものを1〜3本程度残すなどの管理を行う。高木種は薪や炭の生産に好適なサイズになった段階で伐採される。10年から20年の間隔で繰り返し伐採され、その間は林床に生育しているササ類(関東ではアズマネザサ)、低木は刈り取られ、落葉などとともに畑の肥料として利用された。その結果、林床は芝生のように刈り取られ、明るい親しみのある森林として維持されてきた。森林の構成種としては、萌芽再生能力を持つ樹種と埋土種子から再生することが可能な種が中心である。
 関東の「武蔵野の雑木林」は、基本的には畑への肥料供給地としての役割を担っているので、畑地面積と対応した森林が集落や耕作地の周辺に残され、利用されてきた。化学肥料の登場、家庭燃料の化石燃料への転換にともなって放棄され、このような「里山」は激減してしまった。このような変化に伴い、このような明るい落葉広葉樹林に生育していたカタクリなどの植物も激減し、絶滅が危惧される状況になりつつある。
 このような落葉広葉樹を優占種とする薪炭林は、比較的地力の高い場所、あるいは適潤地などの水分条件の良好な場所において維持することができる。関東平野のローム層は水分保持力が高く、このようなタイプの薪炭林維持が広く行われてきたものと考えられる。基本的には農用林であるので、全国各地においても集落の周辺などで維持されてきた。


復元された薪炭林
本来の姿は落葉を掻き取るために低木はすべて伐採されている。明るい雑木林である。

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