クリ Castanea crenata Sieb. et Zucc. (ブナ科 クリ属) |
クリは北海道から本州・四国九州に分布する落葉の高木。冷温帯下部から暖温帯にかけて広く生育する。里山に生育しているものは高木といえるほどのものは少ないが、時として巨樹に生長したものもある。二次林に普通に生育するが、岡山県では沿岸部で少なくなる。特に沿岸部の花崗岩や流紋岩の地域では分布していることが少ない。乾燥にはやや弱いようである。
クリの堅果はいわゆるイガに包まれている。堅果の渋皮にはタンニンが含まれているが、種子の内部には含まれていないので、そのままで食べることができる。果実全体としては、厳重な防御装置をもっているものの、種子に関してはどうぞ食べて下さいと言わんばかりである。食べる部分は子葉であり、双葉の部分に大量のデンプンなどの栄養分が貯蔵されている。コナラやクヌギなどのドングリはタンニンの含有量が高く、人間が食べるためには高度な加工技術を必要とする。簡単に食べることができ、しかも大きくておいしいクリの種子は、古代から重要な食物であったに違いない。 クリの樹皮は、若いときは青味をわずかに帯びた灰色であり、平滑ですべすべしている。大きくなってくると縦に割れ目が入り、コナラの樹皮に似た状態になるが、より割れ方は粗く、すべすべしているイメージがある。
材は落葉ナラ類としては軽い方であり、幹比重は0.6程度。材は赤褐色であり、タンニンを含んでいる。湿った状態でも腐りにくいことから、水車小屋の水がかかる場所や土台などの腐りやすい場所に使用されてきた。 |