U 植生遷移 Succession | |||||||||||||||||||||
1.植生遷移とその種類 自然の植生は年月とともに次第に変化する。これを「植生遷移」あるいはただ単に遷移とよぶ。次のような種類に分類されている。 (1)一次遷移 火山から噴出した溶岩上や大規模な斜面崩壊などのような、土壌が形成されておらず、植物の繁殖のもととなる種子や球根などの「繁殖子」が存在しない状況から出発する植生遷移を一次遷移という。
溶岩上の遷移など、乾燥した場所から始まる陸上の遷移。土壌が形成されるなど、土壌の保水力は次第に向上するので、乾燥状態から適潤状態へと立地条件は変化する。 鹿児島の桜島では、噴火と流れ出た溶岩の年代がわかっているので、異なる年代の溶岩上の植生を調べることによって遷移の系列を把握することができる。最初に侵入するのは菌類と藻類の共生体である地衣類であり、次いでタマシダ・イタドリ・ススキなどの風散布の草本が侵入してくる。次の低木期に侵入してくる樹木も風散布の植物であり、痩せ地に生育が可能な植物・乾燥に耐えることができる植物・空中窒素を固定できる樹木等からなっている。樹林が成立すると、その後に侵入してくるネズミモチ・ヒサカキ・タブノキなどは果肉を持つ植物であり、鳥によって散布される樹木である。鳥が来訪するなど、生物相が豊かになったことの証であるとともに、これらの植物が生育が可能な程度の土壌が形成されたことを示している。なお、アラカシのドングリは、近隣地には重力で散布されるが、ネズミ等の他、カケスなどの鳥類が運搬することが確認されている。 桜島溶岩上の一次遷移(田川)
湖や沼地を出発点とする遷移。教科書的な遷移としては、池→沼地→湿原→森林の系列であるとされている。立地を取り巻く環境が大きく変化しない限り、湖沼には土壌や有機物が堆積し、次第に浅くなる。水草が生育する池が浅くなるとヨシやガマなどの挺水植物が生育して沼地となる。さらに堆積が進行するとハンノキなどの沼沢林が発達し、やがて陸化して通常の森林植生が発達するとされている。 富栄養環境においてはそのような遷移が進行するが、貧栄養環境では沼沢地は湿原へと遷移し、森林化せず、湿原へと発達する。ミズゴケが生育すると、ミズゴケは分解しにくいので泥炭が形成される。泥炭が堆積して周囲から高くなると流入水が減少し、雨水のみによって養われる高層湿原へと発達する。 参考:湿原のお話 |