2002年の蛇ヶ乢(オロガタワ)湿原
 同じ湿原を年月が経過して訪れてみると、違った印象があるが、季節は同じではないし、その年の降水量も違うので、印象としての違いが湿原の変質なのか、季節や気候の違いなのかがわかりにくい。1974年のスライドをデジタル処理したことをきっかけにして、2002の6月30日の画像と比較してみよう。
 中心部の植生は、ヨシが優勢になっている。2002年は渇水年であったので、ヨシが優勢であった可能性はあるが、見通しがずいぶんと悪い。74年には散生していた状況と比べると、全体的にヨシが優勢になっている状況は確かであると思われる。元々、中心部は周辺に比べてわずかに高いので、イヌツゲなどの低木が生育している。このような低木の下にはオオミズゴケが繁茂しており、密なクッションを形成している。イヌツゲやオオミズゴケの生育も優勢になっているように思われた。
 周辺部の地表水がある地域は、かなり様相が変化している。東側の池がある地域はそれほど変化しているようには思えなかったが、源頭部の池塘は浸食されて泥炭が露出しており、その先から南西方向へ明瞭な水路が形成されている。元々は不明瞭で網目状の流れであった場所が人工的に掘り込んだかのような明瞭な水路になっている。この水路が排水路の役割を果たしているようで、この影響によって湿原全体の地下水位が低下しやすくなっているようである。
 このような地下水位の低下によって、池塘の水位は低下し、変動しやすくなっている。この影響を受けてコアナミズゴケの生育量は大幅に低下していた。明瞭な水路の形成原因は不明であるが、下流側からの浸食が原因であることは間違いなく、流出口付近における流出防止対策などが必要であろう。
中心部のヨシ:昔に比べ、ずいぶんと繁茂している印象。
中心部に生育するイヌツゲ
湿原西側のイヌツゲ群落に接して形成された水路
湿原北西部に形成された明瞭な水路
湿原東側の池塘:この付近は大きな変化はない
湿原周辺の大きく生長したカラマツ植林
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