ウルシ Toxicodendron vernicifluum (ウルシ科 ウルシ属
 ウルシからの漆の採取は、樹皮に浅い傷をつけて樹液を出させ、これを採取する。掻き取るので作業は漆掻と呼ばれる。生長が旺盛な時期に樹液がよく取れるので、漆掻は8月に行われる。樹皮につける傷は最初は短く、上に行くにしたがって長くなる。ほぼ2日に一度の作業なので、樹皮に残る傷は約15本ということになる。

 漆掻は数年にわたって行われるが、樹皮が傷で覆われてしまうと漆の品質が落ちるので、伐採され、新たなウルシが育成されることになる。10年以上もの月日と労力を費やして、わずかな漆しか採取できないわけで、漆が高価な塗料である結果となっている。

 ウルシは根発芽を行うので、伐採するとかなりの数の幼幹が発生してくる。伐採跡からも萌芽再生してくるので、これらを適切に管理すれば、新たな植栽は行わなくても済む可能性もある。基本的な性質としてはパイオニアプランツであろうから、個体としての寿命は短く、病気にかかりやすい状況が見える。

 岡山では林原共済会の支援を受けて備中漆の再興を進めてきたが、共済会の母体である株式会社林原が会社更生法の適用をうけるなどの状況から支援が中止され、現在では真庭市、新見市、岡山県郷土文化財団などが支援を行っている。
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