ヤツデ Fastia japonica (ウコギ科 ヤツデ属
 ヤツデは秋から冬の花の少ない季節の日だまりの中で、次々と長期間にわたって花を咲かせる。天気が良いとハエなどの昆虫がたくさん来訪している。花序は2回分裂してその先端に多数の花が球状に付く。花は花序の先端のものから咲き始め、花弁は白色で5枚。おしべも5本である。めしべは先端が5つに分かれているが、開花した直後は集まって1本にみえる。めしべの下部は花盤と呼ばれる部分があり、ここから蜜が分泌される。昆虫が活動しにくい早朝や雨天時にはたくさんの蜜が分泌されているのがわかる。花弁は比較的早期に脱落し、果実の上にめしべが残った状態になるが、このような時期にも昆虫が多数来訪しているところを見れば、蜜を分泌しているようである。若い花はおしべが成熟して花粉を供給し、その後にめしべが成熟して花粉を受け入れるのではないかと思う(雄性先熟)。
 秋も深まった時期の開花は、昆虫に貴重な蜜を提供している。このような季節はずれ(?)の開花は、花粉の媒介者である昆虫の来訪を確保し、受精を確実なものとしている。他の植物とは歩調を合わせず、花の少ない時期の開花戦略は、落葉樹が葉を落とした明るい林の中で大きな成果をあげている。


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