オオバヤシャブシ Alnus sieboldiana (カバノキ科 ハンノキ属) |
岡山県玉野市で調査を行ったとき、見事なオオバヤシャブシ林に出会ったことがある。オオバヤシャブシだけを植栽して何のつもりだろう? と詳細に調査すると、所々に被圧されたクロマツが生き残っていた。クロマツを育てるためにオオバヤシャブシを肥料木として植栽したのであるが、オオバヤシャブシの成長速度がより高いために、主木であるクロマツを覆ってしまったわけである。このような状態になりやすいのは斜面下部などの水分条件の良い場所であり、目的を達成するためには、オオバヤシャブシを時々伐採する必要がある。 オオバヤシャブシは開発などで発生した法面の緑化などにもよく利用されてきた。痩せ地でもよく生長し、寿命もあまり長くないので10〜20年ほどで次第に本来の種が侵入し、自然の林にもどっていく点に関しても都合がよい。 カバノキ科の植物は風媒花であり、大量の花粉を飛散させる。オオバヤシャブシは近年花粉アレルギーの原因となることが判明し、人口の多い都会周辺などでは植栽が敬遠されつつある。人間側の勝手で、有用植物となったり、有害植物になったりでオオバヤシャブシは迷惑であろう。オオバヤシャブシを悪者視するのではなく、人間の花粉アレルギーの原因を究明し、対策をとれる状況にするのが本質であろう。 ヒメヤシャブシよりも側脈が少なく、球果は大きく、房状にならない。オオバヤシャブシの球果もタンニンを含んでおり、よく草木染めなどに利用されている。 |