ナズナ Capsella bursa-pastoris Medicus (アブラナ科 ナズナ属)



 ナズナは畑や水田、道端、荒れ地などに普通に見られる1年生の草本。春の七草の1つであり、七草粥の摘菜とされる。科としては菜っ葉の仲間なので、冬季の野草としては昔は貴重なものであったであろう。
 秋に芽生え、冬はロゼットで越冬し、早春から開花をはじめる。花は次々に花を咲かせる無限花序であり、下の方は果実が形成されているが、先端部では次々とつぼみを形成して開花する。このような開花・結実の形式は、確実に種子形成を行い、余裕があれば更にたくさんの種子を形成しようとする戦略であり、畑のような不安定な立地に生育するには適した方法である。小生の出身校の生物部OB会の名称は「なずな会」である。すでに結実した果実と今から花開かんとするつぼみが1つの茎に連なっている状況を先輩と後輩の連携に例えたものである。
 ナズナはペンペングサとも呼ばれる。果実の形が三味線のバチに似ているためという。よく稔った花茎を取り、果実を注意深く下向きに引っ張って茎と果柄を少し剥がして振るとシャラシャラと音がする。昔は春の田圃でよく遊んだものであるが、そんな習慣も失われてしまった。
ナズナナズナ(花)
ナズナナズナ(果実)
 2000年の秋から冬にかけての二ヶ月間は地球温暖化を思わせるものであった。我が家のイロハモミジは大晦日まで見事な紅葉を見せてくれたが、「もういい加減にしてくれ!」ということで、紅葉をはたき落として大晦日を迎える有様であった。樹木の紅葉・落葉も遅れたが、越年生の草本はすでに春到来の様子である。春の到来を知らせるオオイヌノフグリやハコベ類などが秋の終わり頃から開花している。このHPに掲載した画像の内、3枚は松の内に撮影したものである。冒頭に書いた図鑑的な情報「早春から開花する」は地球温暖化に伴って書きかえなくてはならない時代が来ている。

 2.ナズナのロゼットへ

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