イヌブナ  Fagus japonica Maxim. (ブナ科 ブナ属
 イヌブナは暖温帯上部から冷温帯に生育する落葉高木。高さ25m、直径70cmに達し、優占することもある。本州(岩手県以南)、四国、九州(熊本県以北)の各地に生育するが、日本海側に少なく太平洋側に多い。ブナよりやや低海抜地から出現する。和名はブナよりも材木としての品質が劣ることによる。別名をクロブナとも言うが、これも樹皮の白いブナに対して、樹皮が黒味がかるためである。
 幹は直立して高木となる。葉はやや薄く、長卵形で、縁に浅く波打つ鋸歯を持つ。表面の毛は春が過ぎると脱落するが、裏面は伏した絹毛が残り密生する。葉脈は10-14対であり、ブナが7-11対であるため区別する目安となる。
 イヌブナの果実(どんぐり)は春に開花受粉し秋に成熟する1年成。果実の柄はブナより長い。殻斗はブナに比べ小型で、表面の鱗片はごく短い。1つの果実には2つの堅果が入っている。ブナの果実は、秋に熟すと殻斗が割れて堅果が覗くが、イヌブナの堅果は熟す前から殻斗の隙間から先端が見えている。秋に熟すると殻斗は反り返るように4裂し、堅果を落とす。
文章・画像:太田 謙
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