シリブカガシ  Lithocarpus glabra (Thunb. ex Murray) Nakai (ブナ科 マテバシイ属



 シリブカガシは,岡山県では,吉備高原面の裾野から南部のにかけて低海抜地に点々と分布している。このような地域に普通に見られるアラカシに比べれば,随分とその数は少ない(コジイよりは多い。)。一般にはシイ林の一構成種といったイメージと思われるが,岡山県ではコジイが少ないため,ほぼ単独で優占している林分がほとんどである。このような林分は,主として花崗・流紋岩地の斜面下部や谷間に発達しており,周囲にはアカマツ林が卓越していることがほとんである。一帯の中・古生層地域ではアカマツ林は随分衰退し,コナラ・アベマキ等の落葉広葉樹林に広く覆われつつある。こういった所にはシリブカガシは見られないのだが,何か都合でも悪いのでしょうか。
 左の写真の左側の斜面下部に比較的面積のある林分が発達している(周囲はアカマツ林)。どうも薪炭林のようで林内は一斉萌芽林みたいである。このような若い林分では,樹冠は照葉樹林特有のモコモコとしたイメージがなくて,随分平坦である。
シリブカガシ林相観シリブカガシ林内
 シリブカガシの葉は,葉脈に沿って表面がくぼみ立体的である。最初見たとき,お尻の割れ目のようにくぼんでいるカシと勝手に解釈して覚えたように思う。以後,忘れずにすんでいるし,他のカシと見誤ることもない。このような分かりやすい姿・形・名前の木は大好きである。葉の裏面はシイよりもやや淡いものの,同様に銀褐色で特徴的である。 
シリブカガシ葉表シリブカガシ葉裏
 シリブカガシの樹形について,今まで萌芽樹形しか見たことがなかったものが,今年初めて一本幹の個体を見ることが出来た。萌芽樹形といっても,伐採利用によるものではなく,地形的に不安定な場所に生育しているため,萌芽再生を繰り返しているのであろう,という印象を持っていた。
 左の写真:シリブカガシの樹肌は,平滑で比較的明るい色である。胸高直径が30cmを超えるぐらいになると,筋肉質というか筋張った凹凸が見られる(四方八方にアテがあるような印象)。
 右の写真:田間の一画にある,一里塚風の大径木である。競合種がいないのに,それほど枝を横に広げないのが興味深い。本来の樹冠は半枯れで,枯れ戻りをおこしている。それほど長寿ではないのでしょうか。
シリブカガシ樹皮シリブカガシ樹形
 シリブカガシのどんぐりは濃褐色で,やや紫色を帯びているような印象がある。カシのドングリの中では結構美しく,サイズも十分。これで食べられるのであればうれしい限り。軽くいったぐらいで食せるなら是非試したい。下の写真では,まるで葡萄のように鈴なりになっている様子がうかがえますが,今年はなり年だったのかもしれません。
シリブカガシ果シリブカガシ果
(写真:鴨方町,倉敷市,真備町,久米南町;文・写真は難波靖司氏)

1.シリブカガシ 2. 3.生育例


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