フジ Wisteria floribunda (Willd.) DC.  (マメ科 フジ属)
 フジは木本性のつる植物といて、1つの究極の姿を築いているのではないかと思っている。フジの多い場所を調査していると、地表面付近にまるでワイヤーを張り巡らしたかのようにフジの匍匐茎が張り巡らされているのに出会う。匍匐茎からは、所々から勢いのよいツルが伸びてくる。一気に数mも上の枝まで伸びて、巻きついてしまう。こんな群落になると、樹木の成長は大変であろう。
 伐採されたフジの幹を見ると、年輪のような筋が見える。筋と筋の間は導管がある木部であり、細い筋は形成層と篩部および繊維である。つる植物は、茎への投資を最小限とすることにメリットがある。光を求めて登っていく段階では、形成層は1層であるが、日光を十分に得ることができる樹冠に到達できると、一挙に葉を増やすことになる。その段階では、細い茎が障害となる。一挙に葉面積を増加させるためには、導管を一挙に増加させたいわけで、形成層を多層にすることで、爆発的な拡大を実現しているわけである。形成層が多層になると、中心部の肥大によって材は割れることになる。フジの幹がでこぼこであるのはこのためである。
 大きなフジの幹の切断面を見ると、菌類に侵されて腐朽していることが多い。まきつき方の強力なつる植物であるが、意外に幹の寿命は長くないのかもしれない。つる植物としての限界かもしれない。

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