ヒツジグサ Nymphaea tetragona Georgi (スイレン科 スイレン属) |
ヒツジグサは湿原中の池などの水位の安定した、貧栄養の水質の池に生育する多年草。水底の泥中に太い茎があり、先端から葉が束生する。浮葉と沈水葉を持っており、冬の間は浮葉は枯れて沈水葉のみとなる。花は6月頃から咲き始め、秋まで続いて花期が長い。花は数日間開閉を繰り返し、未(ひつじ)の刻(午後1〜3時)に開くのでこの名が付いた。昼下がりの湿原に咲くヒツジグサは清楚で美しい。花が終わると花茎はらせん状に曲がって沈水し、水中で成熟する。 ヒツジグサは山間の小さなため池や湿原中の池に生育することが多く、大きな池では見ることは少ない。その理由の1つは、魚にあるらしい。ヒツジグサの水中葉は草食性あるいは雑食性の魚に食べられる確率が高いのではないかと思う。冬期の餌不足の時期、ヒツジグサの水中葉は摂食の危険性が高いのではなかろうか。岡山県の鯉が窪湿原では、ため池に鯉が放されたが、それ以降ヒツジグサが絶えて、ジュンサイばかりになってしまった。 下の群生するヒツジグサの画像は、広島県庄原市東城のため池に群生していたもので、池の水は茶褐色で腐植栄養タイプと思われた。イヌタヌキモも生育しており、貧栄養な水質が保たれているものと思われる。 |