タコノアシ Penthorum chinense (ユキノシタ科 タコノアシ属
 タコノアシは絶滅が危惧される植物に指定されていることが多い。河原の追跡調査では、同じ場所に長期間にわたって生育することが少ない。生育が確認されると数年で消滅し、新たに形成された砂州での生育が確認される状態が続く。新生の裸地に侵入して成長するが、他種との競合には弱いのであろう。産業廃棄物処理場に建設された沈砂池に群生した例もあるように、条件さえそろえば本来は旺盛に生育できる植物である。河川において生育地が減少しているのは、ダムの建設による洪水の回数・規模の減少とともに、森林の回復や砂防堰堤・ダムの建設による土砂流量の減少によって河原が安定し、ツルヨシなどが覆ってしまうことによるものと考えている。
 タコノアシは地下茎で増殖できるとともに、種子でも比較的簡単に繁殖させることができる。地下茎はあまり枝分かれしないようで、1本の茎から数本形成される程度のようである。地下茎からは柔らかくてやや太い根が多数形成される。地下茎の先端部分には葉があり、ちゃんとした休眠芽を形成しないので、暖地での生育が本来の姿なのであろうと思う。洪水で押し倒された地上茎からも新しい個体が形成される。その意味では洪水が宿命である河川にはよく適応しているわけであるが、自立する力は弱く、洪水の発生頻度が低下している河川では、他の植物との競合には苦戦している。
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