ナツツバキ Stewartia pseudocamellia (ツバキ科 ナツツバキ属) |
ナツツバキは落葉高木であり、宮城県以西の本州、四国、九州に分布する。花は直径5cmほどで、花弁には繊細なしわがある。5枚の花弁の内最も外側の1枚はやや緑色を帯びている。雄しべは多数が集まって5つの群にまとまり、根元で合生している。雌しべの先端は5つに分かれている。目立つ花ではないが、山路を歩いていると道に落ちていることで、気づくことが多い。清楚な花であり、夏の山歩きではぜひ出会いたい花の1つである。 葉は落葉と常緑でかなり質感は異なるが、ツバキ科であると言われると、なるほど端正なヤブツバキの葉と似ている。岡山県から広島県にかけての地方では、ナツツバキを「サルスベリ」とよぶ方言名がある。樹皮は生長すると斑紋状にはげ落ち、つるつるとして滑りそうである。ナツツバキの他、リョウブも同様な樹皮をしており、サルスベリと呼ばれる。ナツツバキは同属のヒメシャラとともに、シャラノキと呼ばれることも多い。沙羅の木であり、お釈迦様が修行した沙羅樹をイメージしたものであるが、沙羅樹とは別種である。 岡山県では海抜400m以上の山地に多く、ブナ帯にまで生育するが、平地では時折お寺などに植栽されている。近年家庭でも植栽されることが多くなったが、夏の高温・乾燥には弱く、瀬戸内沿岸域の乾燥した地域では成績不良である。植栽する場合には、乾燥しない場所を選ぶ必要がある。自然の生育地も谷筋であることが多い。倒伏して幹が埋没し、これから多数の幹が再生している状況も見られ、崩壊跡地にもよく耐えて生育している。 |
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