ヒ シ Trapa japonica Flerov (ヒシ科 ヒシ属)



 ヒシは大きな種子を形成し、深い水底から茎を伸ばして水面に葉を広げる。どれくらいの水底から茎を伸ばせるのかは種子の大きさによって違うが、水深1.5m前後までの水深では、茎を伸ばせる。透明度の低い富栄養な水質であっても、水底から水面に到達できるわけである。ヒシは長い茎を持ち、茎の随所から水中根を発達させている。水草は植物体の表面から栄養分を吸収できるはずであるが、実はそのような水草は少なく、根を発達させて栄養分を吸収している。根を水中に発達させている水草も少なく、小生はヒシや浮遊植物のホテイアオイ、ウキクサぐらいしか知らない。水中から直接栄養分を吸収するので、水質浄化には貢献できるかもしれない。
 長い茎を持っているので、水位変動には強く、2m程度の水位変動には耐えられるのではないかと思う。このような水位変動への強さが、ため池における優占状態として示されている。水位変動が大きく、富栄養なため池では、このヒシだけしか水草が見られないことが多いのも、このためである。
水面を覆って広がるヒシの群落ヒシの葉(裏面;葉柄が膨らんで浮き袋になっている)
ヒシの群落が密集してくると、葉は空中に立つ茎にはたくさんの水中根が発達している。
 ヒシの葉は水面に浮かんでいるが、密集してくると空中に葉を立てる。このような状態になると、水中は真っ暗であるに違いない。光合成により放出される酸素も空中に出されるので、水中は溶存酸素にも乏しく、酸素が少ない環境で生息できる生物だけになってしまう。

1.ヒシ 2.ヒシの群落

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